日本だからこそできる…エネルギー資源としての水の可能性

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。「オピニオンCROSS neo」のコーナーでは、矢野経済研究所 社長の水越孝さんが“エネルギー資源としての水の可能性”について述べました。

◆水力発電、ダムや河川の有用性

東芝が石炭火力発電所の新規建設から撤退することがわかりました。二酸化炭素を多く排出する石炭火力は需要が減っており、今後は再生可能エネルギー分野に経営資源を集中し、2022年度までに1,600億円程度を投入するとしています。また、再エネ事業の売上高は2030年度までに6,500億円を見込んでいるとのことです。

水越さんはつい先日、元国交相で河川局長を務めたダム行政のプロであり、現在は「日本水フォーラム」の代表理事である竹村公太郎さんに会い、いろいろと話を伺ってきたそうで、今回はそのときのことを交えながら今後のエネルギーと水力発電について解説していきます。

まず、2030年の日本の電源構成は再生可能エネルギーの24%に対し、水力は10%以下。これは現在とあまり変わらない数値ですが、水越さんは「既存ダムと発電に使われていない未利用のダムの活用で、全電源の2割まで引き上げることができる」と言います。

そもそもダムには浄水専用や発電専用、そして治水と利水を兼ね備えた多目的ダムなどがあります。ただ、多目的ダムに関して言えば、「治水と利水というのは相反する」と水越さん。というのも、洪水対策という意味ではいざというときに水を溜めるために普段は水がないほうが良いものの、水を使うとなればたくさんあったほうがいいから。

そして、まだ気象予測が十分ではなかった63年前に定められた法律をもとに、夏は台風を考慮し全ての多目的ダムの水位が下げられるそうで、「水力発電の能力が夏場は活かされない」と説明。それだけに、「ダムをもっと円滑に、特に今は気象予測の精度も上がっているので、もっと細かくコントロールすることで発電、利水の能力を上げることができる」と指摘します。

また、ダムを新設するとなると莫大な費用がかかりますが、「既存のダムの水量を1割上げるだけで発電量は約1.7倍になる」と水越さん。なぜなら、水面が上がれば容積が増え、発電に使える水も多くなるから。実際、嵩上げをしているダムもあると言います。

さらに、日本列島の中央に山地があり、全国に河川が流れていますが、これは「小水力発電の資源が至るところにあるということ」。日本は降水量が多く、川が短く、そして高低差もある、これは水力発電を行う意味では大きいと補足します。

◆水力発電は日本中に分散しているエネルギー資源

前述の竹村さんは「水力発電が日本を救う」という著書を上梓しており、そこでは水力発電のことを「低炭素、純国産、調達コストゼロ。それでいて日本中に分散しているエネルギー資源」と称賛。

その上、水越さんは「ダムは壊れない」とメリットを追加。ダムの耐用年数は80年と言われていますが、神戸には1900年に作られた布引五本松ダムがあり、「設備さえメンテナンスしておけば使える」と言います。

また、ダムを作るにあたってはとても大きな犠牲を払っているだけに、水越さんは「だからこそダムを使う、活かす道を考えていくべき」と主張。しかも、それで少なくとも2兆円規模の電源が確保できると言い、「今、産業界はイノベーションの大きな分野にお金を投じているが、既存の資源を活かすことで日本もまだまだ資源国として電力を確保できる」と訴えていました。

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<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/
番組Twitter:@morning_cross

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