「ノムラの考え」級の価値? 2021年・巨人で気になる〝原メモ〟の行方

ベンチでメモを取る巨人・原監督

門外不出の〝ハラの考え〟を球団の財産に――。巨人・原辰徳監督(62)が試合中にポケットから取り出し書きとめる「メモ」がひそかに注目を集めている。指揮官はメモすることで怒りを鎮める効果もあると語っているが、その中身を見たことがない関係者は興味津々。あの「ノムラの考え」級の価値があるのでは、ともっぱらなのだ。

第三次政権がスタートした2019年シーズンから、試合中に手のひらサイズのメモ帳にペンを走らせる原監督の姿が頻繁に見受けられるようになった。そのタイミングはまちまちで、選手交代や攻守交代の時だけでなく、おもむろに書きはじめることもある。

原監督によると、試合中のメモは06~15年の第二次政権時も取っていたという。その内容については「たいしたことは書いていない。誰を使ったとか、誰が残っているとか…。どういう目的でなぜ代えたか、というというのはスコアを見ればだいたい分かるじゃん」とけむに巻き、あくまで確認作業の一環としたが、一方でこうも語っていた。

「一回ね、書いていると頭が冷える時があるんだよ。カッカカッカしているときに思っていることを100%言っちゃうと、後で言い過ぎたなとかあるじゃん。書いているとちょっと冷静になって、これは言っておく必要があるなとかね。これは今は言う必要がないなとかね」

書く時に下を向くことで落ち着き、怒りを鎮められる「アンガーマネジメント」の役割もある一方で、単なる確認メモではなく、ナインやコーチへの助言や忠告、怒りの内容と理由も書きとめていることをうかがわせていた。

今や名将の域にある原監督が、采配時に感じたことをしたためたメモの数々。自身にとって「たいしたことない」ものであっても、関係者にすれば〝格言、金言〟かもしれない。しかもその内容はほとんど明かされることがなく、関係者としては是非とも保管してもらいたいところだが、なんと原監督は「一応保管はしている。でもなくす。どんどん、どんどん…」。なんとももったいない事態となっているのだ。

門外不出のメモをまとめ、さらに当時の心境を〝取材〟し編集すれば、勝負師としてだけでなくリーダーの心得をまとめた教本として球団の財産となりうる。思い出されるのは故・野村克也さんの「ノムラの考え」だ。

「ノムラの考え」は、いまや〝伝説〟となった、ヤクルト監督時代の長時間ミーティングの原本となったもので、阪神監督時代には冊子化されて選手に配られた。今もなお受け継がれている「バイブル」だ。原監督もリーダー論を語った著書はあるが、さらに更新、熟成された理論を後世に残す必要があるだろう。

来季は3年契約の最終年。3度目の正直で日本一奪取に燃える原監督としても一つの大きな節目となるのは間違いない。2021年シーズン、指揮官はあのメモに何を記すのか。内容だけでなく、その行方にも関心が高まりそうだ。

© 株式会社東京スポーツ新聞社