マラドーナ監督がW杯制覇に向けて神頼み&おまじない

優雅に葉巻をくゆらすマラドーナ氏(ロイター)

【本紙が密着!南アW杯で見たマラドーナ監督のお騒がせ伝説(5)】60歳で急死した元アルゼンチン代表のディエゴ・マラドーナ氏は選手として数々の栄光をつかんだ一方、ピッチ外ではトラブルが絶えなかった。本紙は同国代表監督として2010年南アフリカW杯に臨んだマラドーナ氏に密着。指揮官時代を振り返る緊急連載第5回では、大会前に掲げた公約やW杯制覇に向けて施した「おまじない」など、知られざるエピソードを大公開する。

マラドーナ監督は本大会前、本紙通信員のウーゴ・スエルテ通信員のインタビューに応じ「自信がある。1次リーグを突破できなければ、家を差し出してもいい」と発言。その上で、イレブンに対しても「自分の家を〝かけるよ〟といったんだ。1次リーグは監督の責任だから」。母国ブエノスアイレス郊外に建設した推定5億円と言われるプール付きの豪邸を手放す決意を語った。

その上で監督として臨むW杯に向けて「スペインは過去にないほど状態がいい。ドイツはタフなチームだけど、DF陣は強固ではない。優勝候補ではない」と分析。チームについても「私たちは優勝候補ではない。W杯で勝てないチームはない。そりゃタイトルは欲しいし、神様にもお願いしている。でもW杯はロシアンルーレットだ。審判のミスではじかれることもある」と冷静に語った。

実際、優勝したのはスペインだったことからも、〝見る目〟は確かなようだが、自ら指揮する母国代表の行く末については神頼みをするほどで、世界制覇に向けて「おまじない」も施した。

W杯期間中にアルゼンチンから懇意にするタトゥー師のマリアーノ・アントニオ氏を南アフリカまで呼び寄せ、右ヒジ付近に孫となる「ベンジャミン」の名前を彫り込んだ。次女ジャンニーナさんと同国代表FWセルヒオ・アグエロの間に生まれた初孫で指揮官は「これが7番目のタトゥーだ。これがアルゼンチン代表に幸運をもたらすと信じている」と語った。

ちなみに残る6つは長女ダルマさん、次女ジャンニーナさんの名前。アルゼンチンの英雄で革命家のチェ・ゲバラ氏、キューバの元国家元首フィデル・カストロ氏の肖像。さらに太陽とドラゴンが刻まれているという。

そんなマラドーナ監督が特にかわいがったのは次女のジャンニーナさん。監督に就任後、試合でも自らの体形に合わせた特注のチームジャージーを着用し、指揮していたが、協会側は威厳を示すためにもスーツ姿での采配を求めていた。この要請をかたくなに拒否していたが、大会前、愛する娘から「試合ではスーツを着て」と懇願されると、すぐに承諾。世間を騒がせてきたスターも愛娘にはかなわなかった。

本紙が密着した南アフリカW杯でアルゼンチンはベスト8止まりだったが、破天荒な指揮官のご冥福を祈りたい。

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