新年のごあいさつを申し上げます

旧年中は国境なき医師団(MSF)の活動にあたたかいご支援を賜り、誠にありがとうございました。

2020年、新型コロナウイルスが猛威を振るう中でも、世界70を超える国と地域の人びとに医療人道援助を届けることができたのは、皆さまのご厚情の賜物であり、スタッフ一同心より感謝申し上げます。

昨年、内戦が続くイエメンへ日本から派遣され、新型コロナウイルスに対するプロジェクトを統括したスタッフは、酸素ボンベが足りずに集中治療室のベッド数を制限せざるを得ないこともあったと、その無念さを語りました。しかし、そのように限られた状況下でも、各地で最善を尽くし、治療を終えて笑顔で退院する多くの患者さんを送り出すことができたことは、私たちにとって何よりの励みになりました。 

新型コロナウイルス感染症の治療を受け退院するイエメンの男性 © MSF/Majd Aljunaid

新型コロナウイルス感染症の治療を受け退院するイエメンの男性 © MSF/Majd Aljunaid

新年を迎えてもなお、世界各地で新型コロナウイルスの感染拡大が続いていますが、いま世界中が注目しているのが、新型コロナウイルスのワクチンや治療薬の普及です。

MSFは、多額の公的資金を受けて研究開発されているこれらが知的財産権によって独占されることなく、「世界の公共財」としてあらゆる地域の人びとに行き渡るよう、各国政府をはじめとした国際社会に求めています。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は、全ての地域の人びとにおいて終息しない限り、終息したことにはなりません。利益確保より人命の優先を——。この声を、皆さまとともに強く社会に訴えていきたいと思います。(参考記事はこちら) 

紛争が続くシリアやイエメン、マラリアをはじめとした感染症で多くの子どもたちが命を落としているナイジェリアや南スーダン、コンゴ民主共和国、地中海を命がけで渡った難民や移民が過酷な暮らしを強いられているギリシャ……。ほかにも数多くの地域で人道危機が続いています。

2021年、MSFは1971年12月にフランスで創設されてから50年の節目を迎えます。独立・中立・公平な立場で援助を提供するという変わらない理念のもと、私たちはこれからも一人でも多くの命を守れるよう全力で活動を続けてまいります。

本年も皆さまの変わらぬご支援をお願い申し上げます。

国境なき医師団日本
会長 久留宮 隆
事務局長 村田 慎二郎

左:久留宮 右:村田 © MSF

左:久留宮 右:村田 © MSF

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