〔海外〕2020年下半期の災害を振り返る<7月~12月>

年頭にあたり、改めて昨年下半期に発生した海外での大規模な災害、事件・事故の案件について振り返ります。

※被害の内訳については、原則的にレスキューナウによる情報取りまとめ時のものです。それぞれの記事の最終更新日以降の状況については反映されていないことがあります。

【健康被害】新型コロナウイルス感染症 世界各国で感染拡大
[被害]死者・感染者多数
2019年12月31日、中国政府当局から世界保健機関(WHO)に中国・湖北省武漢市で病因不明の肺炎が集団発生していると報告があり、2020年1月9日、同当局は入院中の肺炎患者から「新型コロナウイルス」が検出されたと発表した。以来、中国のほか、世界各国に新型コロナウイルス感染症が報告され、WHOは日本時間1月31日未明、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。その後、WHOはヨーロッパやアメリカをはじめ世界的に感染拡大が加速していることから、「パンデミックと言える」と述べ、2月11日には、新型コロナウイルス感染症の正式名称を「COVID-19(coronavirus disease 2019)」とすると発表した。さらに、各国では非常事態宣言やロックダウン(都市封鎖)、外出制限が敷かれた。なお、12月29日現在、世界192カ国に感染が拡大し、約177万人が死亡、約8127万人の感染が確認され、日本では3306人が死亡、22万3120人の感染が確認されている。

●7月
【事故】ミャンマー北部で土石崩落事故
[被害]死者172人、負傷者54人
2日朝、ミャンマー・カチン州パカンのヒスイ鉱山で、積み上げられた土石の山が崩れ、172人が死亡、54人が負傷した。モンスーンによる豪雨の影響で地盤が緩み、崩落したとみられている。なお、同州パカンでは2015年11月21日にも、土石崩落事故が発生し、133人が死亡、100人以上が行方不明となっている。

【火災】アメリカ西部で艦船が爆発
[被害]負傷者63人
12日08:30頃(日本時間13日00:30頃)、アメリカ・カリフォルニア州サンディエゴの海軍基地で定期の整備をしていた強襲揚陸艦「ボノム・リシャール」で爆発火災が発生し、乗組員40人と民間人23人が負傷した。火災は4日後に鎮火したが、艦内部が大破するなど被害は甚大で爆発の原因はわかっていない。

【事故】インド洋・モーリシャス沖で日本の貨物船が座礁
[被害]貨物船大破、重油約1180t流出、環境・生態系に影響
25日夜、インド洋の島国モーリシャス沖合約1kmで、岡山県の長鋪汽船が所有し、商船三井の運航する大型貨物船「WAKASHIO」が座礁して、8月6日以降、5つのタンクの計約3800tの重油のうち、約1180tが入ったタンクのほとんどが漏れ出した。なお、乗組員20人は全員救助されて無事だった。少なくとも10~15kmに及ぶ海岸に重油が漂着し、マングローブ林やサンゴ礁などが危機的な状況にあるとして、モーリシャス政府は8月6日、環境上の緊急事態を宣言した。15日、船体は損傷のため二つに割れ、24日、沖合まで曳航された前方部が海没処分された。

●8月
【事故】レバノン首都ベイルートの港で大規模な爆発
[被害]死者203人、行方不明者3人、負傷者6500人以上、家屋約5万軒損傷
4日、レバノンの首都ベイルートの港で巨大な爆発が起きた。爆発があった倉庫にはアフリカ行き船舶から押収された、各種爆薬の主成分にもなる硝酸アンモニウムが約2750t保管されており、修理作業の溶接による火花が引火した事故と見られる。この爆発で港にあった主要穀物庫が使用できなくなったほか、付近の建物が破壊され、首都各地で窓ガラスが割れるなど広い地域で壊滅的な被害が出た。この爆発により203人が死亡、3人が行方不明、6500人以上が負傷した。また、30万人が家を失い、5万軒の家屋と9つの主要病院、178の学校が損傷を受け、直接の損害額は150億ドルに上るとされる。

【事故】インド南部ケララ州コーリコードで旅客機が着陸失敗
[被害]死者20人、負傷者100人以上
7日夜、インド南部ケララ州コーリコードの空港で、アラブ首長国連邦ドバイから到着した格安航空会社エア・インディア・エクスプレスのボーイング737型機が着陸に失敗し、大破した。乗員乗客191人のうち、操縦士と副操縦士を含む20人が死亡し、100人以上が負傷した。当時、空港周辺では激しい雨が降っていたといい、着陸をやり直した事故機は滑走路で停止できず、斜面を落下した。インドでは新型コロナウイルス感染拡大の影響で、多くの国際線が運航停止していたが、この便は国外邦人の帰国を目的に運航されていた。

●9月
【自然災害】北朝鮮に台風9号、10号が上陸
[被害]死者数十人、建物被害2000棟以上など
2日から8日の間に、台風9号と台風10号が相次いで北朝鮮を直撃した。台風9号は、3日02:00頃に北東部へ上陸し、東部の江原道や元山では道路が冠水する豪雨となり数十人が死亡、各地で被害に見舞われた。7日には台風10号が再び北東部へ上陸した。二つの台風により、住宅2000棟以上および公共施設数十棟が損壊または浸水、道路区間60kmと橋59本が崩落、鉄道路線3500mが流れるなどの被害が発生した。北朝鮮では8月以降から豪雨被害が続いており、農作物も甚大な被害を受けた。

【政変・政情不安】コロンビアの首都などで警察に対する抗議デモが一部暴徒化
[被害]少なくとも死者10人、負傷者数百人
9日夜から、コロンビアの首都ボゴタを中心とする各地で、警察の過剰な暴力に対する抗議デモが行われ、その一部が暴動に発展。警察当局との衝突などが発生した。10日の当局の発表では、少なくとも10人が死亡、市民や警官など数百人が負傷した。きっかけとなったのは、9日にボゴタで、規制違反した男性が警官に押さえつけられた状態でテーザー銃で複数回撃たれ、その後死亡した事件で、その様子を捉えた動画がネット上で拡散され、抗議デモが広がった。

●10月
【火災】韓国南東部の高層ビルで大規模火災
[被害]負傷者約90人
8日23:00過ぎ、韓国・蔚山市南区新亭洞にある33階建ての複合高層ビル「サンファンアールヌーボーマンション」で大規模な火災が発生し、約90人が煙を吸い込むなどして病院に搬送され、うち3人が重傷を負い、数百人が避難した。当時、蔚山では強風注意報が発令されていて、火は強風にあおられて一気に33階まで燃え広がった。発生から約15時間半後の9日午後に鎮火が確認された。

【自然災害】ベトナム中部で豪雨災害
[被害]死者111人、行方不明者26人、避難者約20万人、住宅浸水約17万8000棟など
19日までに、ベトナム中部の10省・市で台風や熱帯低気圧による豪雨が続いた影響で、洪水や地滑りなどが相次いで発生し、111人が死亡、26人が行方不明、約20万人が避難した。このほか、住宅約17万8000棟が浸水、農地約7200haが冠水し、道路の損壊が約160kmに及ぶなど過去数十年で最悪の豪雨災害となった。

【自然災害】トルコ・ギリシャ沖でM7.0の地震
[被害]死者116人(うちギリシャ2人)、負傷者1000人以上、少なくとも建物倒壊20棟
30日14:51頃(日本時間同日20:51頃)、トルコ・ギリシャ沖のエーゲ海でM7.0の地震が発生し、トルコとギリシャ領サモス島で合わせて116人が死亡、1000人以上が負傷したほか、トルコ・イズミル沿岸部では津波による浸水被害も起きた。被害が集中したイズミルでは、少なくとも20棟の建物が倒壊するなどして、多数の人々が住居を失い避難所生活を余儀なくされた。なお、同地区の倒壊した複数のビルが耐震基準を満たしていない違法建築だった可能性があると指摘されている。
過去トルコでは、1999年8月にイスタンブール・イズミット付近でM7.8の地震が発生し、1万7000人以上が死亡、4万人以上が負傷、2011年10月には東部ヴァン付近でM7.2の地震が発生し、約600人が死亡、約4000人が負傷している。

●11月
【テロ】オーストリア首都ウィーンで過激派組織ISによるテロ
[被害]死者4人、負傷者22人
2日20:00頃(日本時間3日04:00頃)、オーストリア・ウィーン中心部シュテファン大聖堂付近の6カ所で銃などを用いた襲撃事件が相次ぎ、男性2人と女性2人の計4人が死亡、22人が負傷した。警察に射殺された実行犯の男は、オーストリアと北マケドニアの二重国籍で、イスラム過激派組織ISに参加するためシリアへ渡航を試みたとして、2019年4月に有罪判決を受けていた。

【安全保障】エチオピア紛争
[被害]死傷者数不明、難民数万人
11月はじめ、エチオピア・ティグレ州で州政府を担うティグレ人民解放戦線TPLFの軍事部門と連邦政府軍の対立が激しさを増し、5日には武力衝突、紛争状態へと突入した。13日、TPLFは連邦政府軍の空爆への報復として、隣接するアムハラ州の空港2つをロケット弾で攻撃したほか、14日には隣国エリトリア首都アスマラの空港をミサイル攻撃するなど、戦闘地域が拡大した。隣国スーダンには多数の難民が押し寄せており、国営通信や国連難民高等弁務官事務所UNHCRによると、15日までに約2万から約2万5千人が国境を越えた。エリトリアとの和平など、アフリカ東部の安定に尽力したとして2019年ノーベル平和賞を受賞したアビー政権は、国連やアフリカ連合をはじめとする国際社会の停戦要請に譲歩せず、TPLFの武装解除まで戦闘を続ける意向を示している。

【自然災害】ハリケーン「イオタ」が中米を通過
[被害]死者40人以上、避難者数十万人
16日夕方、カテゴリー5のハリケーン「イオタ」が中米ニカラグアに上陸し、20日までに同国やホンジュラスなどで40人以上が死亡した。中米諸国は2週間前にも「エタ」が通過するなど、ハリケーン直撃の被害が相次いでおり、脆弱になっていた地盤で洪水や土砂崩れが起きた。ニカラグアやホンジュラスでは数十万人が避難を余儀なくされ、グアテマラ、エルサルバドル、南米コロンビアなどでも死者が出た。今年は勢力が強い大西洋の熱帯低気圧が30個と、2005年の27個を上回って過去最多で、「壊滅的」とされる最強のカテゴリー5に発達したのは「イオタ」が今年初だった。

●12月
【事件】ドイツ西部で歩行者に車突っ込む
[被害]死者5人、負傷者14人
1日、ドイツ・トリアーにある歩行者専用の商店街に、乗用車が突っ込み、5人が死亡、14人が負傷した。逮捕された男は精神疾患を抱えていた可能性があるが、テロに結び付く政治的背景は確認されていない。なお、2月には、ヘッセン州フォルクマーゼンで、乗用車がカーニバルのパレードを見物していた人々に突っ込み、52人が負傷、2016年12月には、 首都ベルリン中心部で、多くの買い物客で賑わっていたクリスマスマーケットに大型トラックが突っ込み、12人死亡、48人が負傷した事件が起きている。

【事故】中国・重慶市の炭鉱で事故
[被害]死者23人
4日17:00頃(日本時間同日18:00頃)、中国・重慶市永川区の炭鉱で一酸化炭素の濃度が上昇し、坑内で施設の解体作業中の23人が死亡した。この炭鉱では、2013年3月に硫化水素により3人が死亡する事故が発生したことなどから約2カ月前に閉鎖され、設備の解体作業が行われていた。なお、9月には、重慶市の別の炭鉱で一酸化炭素中毒で16人が死亡した事故が起きている。中国の炭鉱では死亡事故が相次いでおり、安全管理が課題になっている。

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