イオからジュリアへ 日本の女子エースのバトンが渡された〝あの日〟

ジュリア(左)と紫雷イオ

【現場のウラ側 現場ノート】女子プロレス「スターダム」のジュリア(26)が東京スポーツ新聞社制定「2020年度プロレス大賞」で女子プロレス大賞を初受賞した。デビューが17年10月だったことを考えると、快挙と言えるだろう。

本人の努力のたまものであるのはもちろん、周囲から多くのサポートもあった。その一人がスターダムOGで、現在は米WWEで活躍する紫雷イオ(30)だったと思う。

19年12月30日、クリスマス休暇で一時帰国したイオを囲む会があり、記者も参加させてもらった。その場に呼ばれたのがジュリアだ。緊張の面持ちで逸女と対面した時の様子は、まるであこがれの選手に会えたファンのよう。実際にファン時代、サイン会の列に並んだこともあったそうだ。

業界の大先輩にあたるイオは「ジュリアさん」と「さん」付けで呼び、自身の体験談を語り聞かせた。07年3月にデビューしたイオはフリーとしてさまざまな団体のリングに上がり12年5月、全ての関係を断ち切ってスターダムに入団した。

当時のジュリアもデビューから所属した前団体を辞めてスターダムに来たばかり。しかも移籍時に騒動があり、過去とは〝完全決別〟した状態だった。ともに「プロレス一本で勝負してトップに立ちたい」という思いだったのだろう。

イオの言葉をひと言も聞き逃さないというくらいジュリアは真剣な表情で耳を向けた。時を忘れるように宴は明け方まで続き、解散したのは大みそかの午前4時だった。

夜明け前の静寂に包まれた新宿2丁目でイオと別れのハグをしたジュリアは、意を決したように言った。「いつか、いつの日か戦いたいです!」。するとニコっと笑ったイオは「リングはね、世界中がつながっているんだよ」と答えた。

年が明けた20年、ジュリアの活躍はめまぐるしいものがあった。イオが15~17年まで3年連続で受賞した女子プロ大賞は、3年の時を経てジュリアの手に渡った。思えばあの時、日本の女子エースのバトンはしっかり渡されていたのかもしれない。いつの日か、リングで再会できる日は来るのか――その日を楽しみに待ちたい。(プロレス担当・小坂健一郎)

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