コロナ不況で銀座の店が無念の閉店 蛾次郎トークは最後の夜も〝舌好調〟

大みそかに店を閉店した佐藤蛾次郎

新型コロナウイルス禍が飲食業界にも多大な影響を与えた2020年、有名店の閉店も相次いだ。

国民的人気映画シリーズ「男はつらいよ」の源公(源ちゃん)役で知られた俳優・佐藤蛾次郎(76)が1996年から24年間、東京・銀座で営業してきた「Pabu 蛾次ママ」も大みそかに閉店した。

蛾次郎が作る薬膳カレー「蛾次郎の寅さんカレー」は、故渥美清さんにも愛されていた。

「タツノオトシゴ、朝鮮人参などを漬けた薬膳酒を使っているから、二日酔いにならないよ。カレーのレシピはオレの頭の中にしかない」と蛾次郎は語った。蛾次郎ラベルの黒糖焼酎、手作りのポップコーンなど、蛾次郎こだわりメニューは大好評だった。

店が最後の日となった大みそかにも、蛾次郎のトークは絶好調。1984年のロサンゼルスオリンピックで聖火ランナーも務めた蛾次郎はその時、使ったトーチを客に持たせ、「撮影終わったら、走ってこいって言われて」と気さくに話した。

蛾次郎は06年にオダギリジョー主演の「時効警察」、19年には西島秀俊と西田敏行がダブル主演の「任侠学園」など、近年も個性的な脇役の名優として活躍し、若いファンも多い。この日も、そんな若い客のリクエストで、「参上 佐藤蛾次郎」(キャニオンレコード、絶版)を店で流すと、「沢田研二みたいなステキな歌声ですね」と若者にチヤホヤされ、「じゃ、沢田研二歌おうか」とカラオケで沢田の「時の過ぎゆくままに」を披露した。

店長として切り盛りする息子で俳優の佐藤亮太から「パパ、嫌だと思うけど、最後はこの曲ね」と、「男はつらいよ」をリクエストされると熱唱。「ありがとうございました」と最後の言葉は短かった。

© 株式会社東京スポーツ新聞社