2021年世界の株式市場を予測 日経平均株価は3万円を射程に?

2020年の世界経済は新型コロナウイルスの大流行により、著しいダメージを被りました。しかし、株式市場では景気・企業業績の回復を織り込む形で尻上がりに上昇する展開となりました。

2021年も引き続き、堅調な相場展開を見込むためには、そうした「期待」を着実に「現実」へと置き換えていくことが求められるでしょう。2021年の米国、欧州、中国、日本の株式動向を予想してみたいと思います。


ワクチン承認で自然体での株価上昇を見込む

12月には欧米で新型コロナ用ワクチンが一部で承認され、投与が始まりました。全面的な実用化にはもう少し時間がかかりそうですが、脱コロナ下での経済正常化に道が開かれたと判断されます。人々の行動を制限することによってしか感染の拡大を抑えることができなかった状況と違い、ワクチンが存在することの安心感は、すべての経済主体にプラスに作用すると考えられます。

また、各国政府・中央銀行による手厚い政策支援が継続されることで、景気の下振れリスクは限定的なものになるでしょう。結果として、実際に「期待」が「現実」に置き換わる確度は相当高まっているイメージです。

2021年は自然体で株価水準の切り上げを見込むのが基本シナリオとなります。むしろ、想定以上の経済正常化によって、市場金利が切り上がることの方がリスクとして気掛かりです。順調な相場上昇に水を差すことがないかどうか留意したいところです。

米国はさらなる高みへ

2021年の米国株については、健全な株価上昇を予想しています。2020年3月のコロナショック後の急激な株高とはいかないまでも、業績拡大に応じた巡航速度での株価上昇は十分に期待できそうです。

先の大統領選・議会選の結果、民主党の大統領のもとでの、上院・共和、下院・民主の「ねじれ」状態の継続がほぼ確定し、民主党の完全支配下で予想された増税や各種の規制強化への圧力は弱まる可能性があります。

適度な規模での経済対策の発動と、低金利環境の維持など株式市場にとって好都合な条件は整っています。FRBは2023年末までのゼロ金利継続を示唆するとともに、追加緩和を匂わせています。予想PERがさらに切り上がるかどうかは不明ですが、少なくとも20倍を割り込む可能性は低いと言えます。

最高値を更新の可能性も

米国の企業業績は、2020年度は大幅減益ですが、2021年度は2割強、22年度は15%程度の増益が見込まれます。2022年におけるS&P500ベースの予想EPSを200ポイント、2021年末の予想PERを20倍として計算されるS&P500のターゲットは4,000ポイントです。

S&P500の値4,000ポイントをベースにNYダウ、ナスダック総合の年末ターゲットを計算すると、それぞれ33,000ドル、13,500ポイントという水準が得られ、想定通りの展開となれば、米国株は引き続き最高値更新の年となるでしょう。

一方で、年明け早々の1月5日は要注意です。この日は、米ジョージア州の上院議員選挙で2議席を争う決選投票が行われます。1議席でも共和党候補が確保すれば上院での共和党過半数が決まります。しかし、2議席とも民主党候補が取ると、大統領と上下両院のすべてを民主党が支配する、いわゆる「トリプル・ブルー」の状態となってしまいます。

こうなると、すでに「ねじれ」を受け入れ、株価に織り込んできたマーケットでは混乱が生じる可能性もあります。年末までの3ヵ月間(10-12月)で相場が堅調に推移した後の翌年1月は、反動安となることが多いのも一つの経験則ですが、そのきっかけとなってしまうのか否かを見極めたいところです。

また、中期的なリスクとして挙げられるのは、やはり米長期金利の上昇でしょう。12月のFOMCで米金融当局は緩和姿勢の継続を改めて強調しましたが、その意に反して長期金利が上昇した場合には、株式市場には相応のネガティブな影響が及ぶとみられます。とりわけ、名目金利からインフレ期待を除いた実質金利の動向には要注意です。

出遅れ欧州株は挽回に注目

他の地域と同様に、足元で再び新型コロナの感染が広がる欧州の2021年は、感染拡大による行動制限、景気停滞の負の連鎖を断ち切ることができるかどうかがポイントです。そういう意味では、英国でいち早くワクチン投与が始まり、その他欧州域内でもワクチン投与にメドがつきつつあることは、朗報として受け止められるでしょう。

12月のECB理事会では追加緩和策が導入され、欧州復興基金も近い将来の稼動が見込まれています。財政・金融の両面からのサポートは、欧州株を元気づけるのに一定の役割を果たすと考えられます。

2020年の欧州(ユーロ圏・英国)経済が10%前後のマイナス成長に至った一方で、2021年は4~5%台の成長が予想されています。企業業績の方も汎欧州株価指数(STOXX600)ベースで、2021年は3割以上の増益が予想されています。

こうしたファンダメンタルズの改善を信じるのであれば、欧州株に対する目線はあくまでも上向きとすることができるでしょう。2020年は株価の戻りで大きな後れを取った分、2021年の挽回には期待が寄せられます。

他方、欧州株のリスクを考えたとき、真っ先に思い浮かぶのは、英国EU離脱の移行期間終了の影響です。英国とEUは12月24日、土壇場で新たな自由貿易協定(FTA)など将来関係を巡る交渉で合意しました。

貿易その他のルールが整わない状態での離脱は何とか回避されましたが、離脱後の双方の経済に与える影響は未知数です。域内経済の結びつきの強さを考えると、その悪影響は欧州全域に及ぶ可能性があるため、要注意です。

中国は「脱コロナ」の試金石となるか

新型コロナの感染をいち早く収束させ、経済正常化に舵を切った中国は、これからコロナ禍の修復を図るその他主要国にとっての試金石のような存在です。世界経済が冷え込む中にあっても、2020年の中国経済はプラス成長で着地する見通しで、2021年も8%台での成長が見込まれています。

このシナリオ通りの景気回復が実現できるようであれば、投資対象としての中国は、グローバル株式市場を牽引する役割が有力視されます。中国にとっての2021年は、共産党の結党100周年の節目に加えて、第14次5ヵ年計画をスタートさせる重要な年に位置付けられます。

是が非でも新型コロナを克服し、経済を安定成長の軌道に戻したいと考える中国政府からは、様々な政策が展開されるものと予想されます。国を挙げての経済拡張を見越して、中国株への前向きな取り組みを検討すべきかもしれません。

もし、死角があるとしたら、それは中国政府による民間企業への規制強化の動きと言えそうです。最近になって、政府が巨大化する中国ハイテク企業への介入を強める事例が散見されます。それが中国株の競争力を削ぐようなかたちで現実化すれば、その分だけ投資妙味が後退する可能性があります。

日経平均株価は3万円を射程圏内へ

2021年は日本でもアフターコロナの下での業績回復が進むことが想定されます。これまでコロナ禍の中、世界の景気敏感株ゆえに出遅れていた日本株ですが、今後は経済正常化の追い風を受けやすいと考えられます。

2021年から2022年にかけての利益回復の勢い(21年度は40%以上、22年度も10%程度の増益率)は、米国を上回る可能性があります。景気敏感株の業績回復と共に、菅政権が進めるDX(デジタル・トランスフォーメーション)に関わるIT企業や、EV等のクリーンエネルギー関連企業の成長にも期待が集まると考えられます。

2022年度における日経平均予想EPSを 1,800円と予想し、2021年末の予想PERを過去平均よりやや高い16倍強として計算すると、日経平均株価のターゲットは29,000円(高値30,000円、安値24000円)となります。多くの市場参加者にとって、夢の日経平均株価3万円は十分、射程圏内に入っているように思います。

<文:チーフグローバルストラテジスト 壁谷洋和>

© 株式会社マネーフォワード