〝5万回斬られた男〟福本清三さんは「日本一、魅力的」 異例の追悼文出した寺島進との深い縁

第21回東京スポーツ映画大賞で特別賞を受賞した福本清三さん

時代劇などで活躍し、「5万回斬られた男」の異名を持つ俳優・福本清三さんが今月1日午後5時26分、肺がんのため京都市内の自宅で亡くなった。77歳だった。葬儀は故人の遺志により、親族のみの家族葬という形で執り行われた。本社制定の「第21回東京スポーツ映画大賞」では特別賞を受賞し、授賞式で殺陣を披露したこともあった。そんな福本さんを慕っていたのが俳優・寺島進(57)で、授賞式ではまるで付き人のように福本さんに付き添っていた――。

福本さんは62年前の1958年、15歳で東映京都撮影所に専属演技者として入所。以来、50年以上にわたり、テレビドラマ「水戸黄門」や、映画「仁義なき戦い」など、主に時代劇で悪役を演じ続け〝日本一の斬られ役〟とも称された。

トム・クルーズ主演で2003年に公開されたハリウッド映画「ラストサムライ」には、日本人キャストの1人に抜擢され、注目を集めた。

そういった功績が称えられ、12年には本社制定の「第21回東京スポーツ映画大賞」で、特別賞を受賞した。審査委員長を務めるビートたけし本紙客員編集長は「斬られ役で『5万回斬られた』って言われる役者がいるんだって? ああこの人、福本清三っていうんだ。確かにこの顔はよく見るよなぁ」と、表彰することを決定した。

授賞式に出席した福本さんは、同じ年に技術スタッフ賞を受賞した殺陣師の二家本辰己氏とともに、壮絶な殺陣を披露。最後には見事に斬られて舞台上に散り、会場を大いに盛り上げた。この演技にたけしも「悪役ばかり。でも、うまいんだよ。本当に。おかげで主役も引き立つ」と絶賛していた。

福本さん本人は「こんな華やかな場所に自分なんかが…」とあくまで謙虚だったが、「時代劇低迷の折にこうして公の場で表彰していただき、本当にありがたい」と受賞を喜んだ。

ただ時代劇の低迷には心を痛めていた。

「立ち回りが好きな人はたくさんいるが、時代劇は形の習得に時間がかかり、製作にお金もかかる。僕らの時代は会社(東映)が守ってくれたし、仕事もあったが、今は映画のシステムが変わり、若い人が食えない。昔のように皆があこがれる職場にならないといけない」

また「ラストサムライ」に出演したことについては「時代劇=日本人の心を伝えるために、使ってもらえるなら世界のどこへでも駆けつける。もちろんハリウッドから声がかかれば、すぐに飛んでいく」と話していた。

そんな福本さんを慕っていたのが俳優・寺島進だ。寺島は「『日本一の斬られ役』と言われてましたが、人として男として『日本一、魅力的な役者さん』です。尊敬致します福本清三さんの勇姿は一生忘れません。心からご冥福をお祈り申し上げます。合掌」とコメントした。

映画関係者は「寺島さんはまだ売れっ子になる前、福本さんにものすごくお世話になったそうです。売れてからも、京都に行くたびに福本さんの現場を訪れ、まるで付き人のようにお世話をしていた」と明かす。

実は、東スポ映画大賞授賞式でも、そんな寺島の姿を目の当たりにした。福本さんが受賞した年は、寺島自身の受賞はなかったにもかかわらず授賞式に訪れ、まるで付き人のように福本さんに付き添っていたのだ。寺島は96年に新人賞、02、15年に助演男優賞を受賞した、東スポ映画大賞の常連だけに、式の進行などについても福本さんに自ら説明するなど、献身的にサポートしていた。

映画関係者は「訃報について寺島さんがコメントを出すのは過去に例がない、異例のこと。それほど福本さんにお世話になった思いが強いのでしょう」と話した。

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