ポストコロナ、「機能する政府」へ。小さな政府vs大きな政府を超えて

 新型コロナのパンデミックで世界主要国の財政規模は膨張している。その原資はほぼ借金で、財政赤字が膨張していると言っても良い。財政赤字を容認し財政規模を拡大するケインジアン的な大きな政府論は1970年代までの米国の双子の赤字や英国病によって否定的になった。代わって市場万能論、規制緩和論を軸とする小さな政府論が台頭した。1920年大恐慌による市場の失敗が大きな政府論を合理化し、70年代までの財政赤字膨張が政府の失敗を認識させ、再び市場万能論を基礎とする小さな政府論の台頭で今に至るが、これも上手く機能しているとは言いがたい。

 リーマンショック以降の長期停滞で「インクルーシブ・グロース」という概念が登場したが、今回のパンデミックがこの積極財政論を後押ししている状況だ。パラダイムシフトは既に起こっている。まず、デジタル・プラットフォーマーの台頭による市場競争パラダイムの変質、そして何といっても中国型国家資本主義という政府主導の強力な対抗軸である。

 しかし、単なる政府支出の膨張が財政金融上の大きな副作用を産み出すことは70年代までに世界が経験していることだ。今求められていることは政府の「財政規模の膨張」ではなく「機能の拡大・強化」だ。

 21日、日本総研が「ポストコロナ社会に向けた『機能する政府』の7つの要素」という論文を発表しているが、その副題は「小さな政府vs大きな政府の対立を超えて」となっている。古典的な市場か政府かという議論を超えて「機能する政府」を作り出すヒントは「北欧諸国の政府の在り方に求められ」、「弱者救済よりも弱者復活を目指す機能」の強化が重要と論文は言う。

 「機能する政府」のための7つの要素とは、「1)政治体制に依存しない人類共通問題での新たな国際協調の枠組みの創出、2)業務規制・競争政策の在り方の抜本的再構築、3)労働分配の合理的決定メカニズムの構築、4)税・社会保障の抜本的改革、5)財政配分のための独立的第三者機関の設置、6)機能する官民連携の再構築、7)政府と中央銀行の連携・分業体制の再構築」である。

 我が国では「官民の協調や労使間の合意形成」など、これらの課題に取り組みやすい環境にあると言う。「機能する政府」に向け「世界に先駆けて対応策を見つけることがわが国に求められる役割といえよう」と論文はまとめている。(編集担当:久保田雄城)

日本総研がポストコロナ社会に向けた「機能する政府」についてレポート

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