いろんな意味で非常に景気の良かったシリーズ第2作目『キングスマン:ゴールデンサークル』(2017年)を改めて振り返っておこう。
まるでオフィシャル二次創作? ファンが観たかったアレコレが詰まったシリーズ第2弾
本作は、キングスマンが謎の犯罪組織ゴールデン・サークルの攻撃を受けてあっけなく壊滅するところからはじまる。タロン・エジャトン演じる主人公のエージェント、エグジーは仲間や友人が巻き込まれたことに怒りを爆発させるが、同じく生き残ったガジェット担当のマーリン(マーク・ストロング)と共に、米スパイ組織ステイツマンの協力を仰ぐためアメリカに向かうことに。そこで死んだはずの先輩エージェント、ハリーと再会し戸惑いつつも、エグジーたちはクセの強いステイツマンの面々と協力し、ゴールデン・サークルの陰謀を阻止するべく再び激しい戦いに身を投じていく。
キングスマン壊滅(前作で活躍した面々もあっさり死亡)のサクサクぶりに不満のあるファンも少なくなかったと思うが、マーリンの大胆なキャラ変(というか素バレ)をはじめ、まるでファンによる二次創作のような萌え要素がふんだん盛り込まれていて、ある意味見たいものを見せてくれたとも言える本作。タロン・エジャトンの公式Twitterアカウントのヘッダー画像がコリン・ファースとの2ショットだったりして、同シリーズがファンだけでなくエジャトンにとっても特別なものなのだということが伝わってくる。
観たら問答無用で元気が出る! 無情な大胆展開こそ『ゴールデン・サークル』の見どころ
1作目『キングスマン』(2014年)では、健康優良不良少年エグジーがハリーに才能を見出され、過酷な試験をパスしてキングスマン入り。そしてサミュLのオジキ演じるIT長者ヴァレンタインによる、あまりにも豪快な“人類間引き計画”を阻止する……というお話だった。そんなエグジーがすっかり立派なエージェントに成長した『ゴールデン・サークル』では、キングスマンの支柱でありエグジーの師でもあったハリーとの驚きの再会、以前の記憶を失っていたハリーの沈黙からの再生、そして紳士なキングスマンとは180度違う豪快アメリカンなステイツマンの面々との交流が大きな見どころとなる。
もちろん大小様々な武器から便利グッズまで、要所で繰り出されるクールなガジェットもパワーアップ。さらに、遠慮なくデレるようになったストロング、ちょうちょの幻覚を見て子犬を抱き微笑むファース、英大型フェス<グラストンベリー>を舞台にチャラつきつつも、スパイ映画界の先輩ジェームズ・ボンドへのアンチテーゼかのように貞操(?)を守るエジャトン、嬉々としてサイコな黒幕ポピーを演じるジュリアン・ムーア、まるで『ロケットマン』(2019年)へのネタフリかのようなエルトン・ジョン(本人役)との共演などが楽しめる。
ペドロ・パスカル大活躍! 痛快なスパイ・アクションが堪能できるパスカル映画
そして一番オイシイところをかっさらっていくのが、ステイツマンの凄腕エージェント、ウイスキーを演じるペドロ・パスカルだ。オールドスクールな立ち居振る舞いとは裏腹に、ハイテク武器(と言いつつ投げ縄やムチなど)を駆使して敵を瞬殺するアクションシーンは必見。ある意味ペドロ・パスカル映画といっても過言ではない活躍ぶりで、出演最新作『ワンダーウーマン1984』(2021年12月25日[金]公開予定)が俄然たのしみになってくるので、パスカル未体験の方はぜひ本作を観て口髭のウォームアップをしておいていただきたい。
こまけえこたあいいんだよ! と言わんばかりの雑……もとい豪快な展開で一部ファンが頭を抱えた『ゴールデン・サークル』。しかし、昨今のドラッグ事情に物申すような骨太設定や、いちいちツボを突いた音楽使い、ミッションにかこつけた大胆な下ネタ、スカッと気の利いたラストなどなど、純粋に痛快かつ刺激的なスパイ・アクションを求めている人には問答無用でオススメしたい快作である。