なでしこリーグ7月18日開幕 頼もしいINAC岩渕真奈&田中美南

【なでしこリーグ歴代最182点 大野忍 ひとりごと】新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期されていたなでしこリーグの開幕日が7月18日に決まり、選手たちはホッとしつつも練習に熱が入ってくるんじゃないでしょうか。とにかく長い間、選手全員が何もできないのは私だって経験がないから、心も体も準備が大変だと思います。

でも、裏を返せばどのチームにも今季優勝のチャンスがある。「3強」と呼ばれる日テレ、INAC神戸、浦和に歴史や実績があるといったって、こんな状況でのスタートはないわけだから過去は参考にならない。あとはどれだけ野心を持った選手がいるか。「(日テレ)ベレーザが相手じゃしょうがない」「INACは強いしな」と最初から気後れしちゃってる選手もいる。それじゃダメなんです。私は日テレでもINAC神戸でもプレーしたけど、狭山やノジマステラ神奈川相模原に所属していたときは、絶対に上位を食ってやろうと思っていたし、それが不可能ではないと思っていました。こんな選手が多ければリーグのレベルは上がるはずです。

ただ、開幕まで1か月というのはやはり短い。しかも、コロナ禍の状況ですから練習試合をやるのも難しいでしょう。それに体はつくれても、試合勘というのはすぐに戻りません。紅白戦と練習試合も全然違います。選手としては1試合でも多く実戦練習をやりたいところですが、かなわないとなると、調整は簡単ではありません。

不安ばかり言ってしまいましたが、期待できることもありました。先日、私が指導しているINAC東京のスクールの子供たちを対象に、ビデオ会議システム「Zoom」を使ったトークショーをやったとき、INAC神戸のFW岩渕真奈選手と田中美南選手が出てくれたんです。どんな話をしてくれるのかと思っていたら、2人ともすごくしっかりした意志を持っていてサッカーに懸ける思いやリーグ戦開幕に向けた取り組みなど、びっくりするくらい頼もしい内容でした。

岩渕選手は2011年ドイツ女子W杯で優勝した時の最年少メンバーでしたが、当時、澤穂希さんや私たちの思いがどれだけ伝わっていたかは疑問でした。田中選手に至っては代表で大先輩たちとのプレー経験がほとんどない。そんな2人なのに、今では私たちが言いたかったことをしっかり理解し多くの後輩に伝えようとしている。その姿に感動したし、子供たちには申し訳ないけど、私が一番有意義な時間を過ごせた気がします。

なでしこジャパンの浮沈のカギを握る2人の心意気を聞き、来年に延期となった東京五輪も何とかしてくれると感じました。もちろん、その前にリーグ戦です。当面、代表チームの活動はありません。代表に選ばれるためのプレーはいらない。自分のチームを勝たせるために全力を尽くせる選手を私も探していこうと思います。

(元日本代表FW)

© 株式会社東京スポーツ新聞社