在日米海兵隊、東北や九州など全国各地の「立ち入り禁止」地域を拡大 菅政権より新型コロナ危機意識高く

By Kosuke Takahashi

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、菅義偉首相が1月7日、首都圏の1都3県に緊急事態宣言を再発令するなか、本州唯一の米海兵隊基地となっている岩国航空基地が隊員らを対象にして、これまでの関東や関西、中部、北海道、沖縄などに加え、東北や近畿、九州、四国の一部など全国各地を相次いで「立ち入り禁止」に指定している。

国内の新型コロナ感染者数が3日連続で過去最多を更新するなか、米海兵隊岩国航空基地は7日、フェイスブックで福島県、滋賀県、長崎市、甲府市、宮崎市を新たに立ち入り禁止地域に定めたことを明らかにした。7日時点で次の地図のレッドゾーン(危険区域)こと、赤色部分が「立ち入り禁止」となっている。

地図上の赤色部分が米海兵隊岩国航空基地が立ち入り禁止にした地域(2021年1月7日付のフェイスブックから)

この上記の地図を、下記の昨年12月9日時点の地図と比べると、在日米海兵隊が「立ち入り地域」を全国的に拡大してきたことがわかる。

地図上の赤色部分が米海兵隊岩国航空基地が立ち入り禁止にした地域(2020年12月9日付のフェイスブックから)

また、単純に立ち入り禁止地域を全国的に拡大しているだけではない。例えば、12月時点では群馬県や長野市、三重県、和歌山県、愛媛県松山市、大分県を立ち入り禁止にしていたのを1月時点ではそれを解除したりと、地域の感染状況を見て機敏に判断していることがうかがえる。

観光支援事業「Go To トラベル」の全国一時停止や緊急事態宣言の再発令で後手に回った菅政権と違い、在日米軍がこの1カ月間、危機管理意識を高め、日本国内での新型コロナ感染対策をぐっと強めてきたことがわかる。

新型コロナウイルスの7日の国内感染者数は7000人を超え、3日連続で過去最多を更新した。昨年11月に入って以降、急激に上昇してきた第3波の感染拡大に歯止めがかからない状況が続いている。

米海兵隊岩国航空基地は、この「トラベル規定」が日米地位協定こと駐留米軍の地位に関する協定(SOFA)が適用されるすべてのメンバーが対象になると述べている。米連邦職員ら非軍人も含まれている。

また、地図上の緑色部分のグリーンゾーンは、レッドゾーンと違い、泊まりがけの滞在も認められている。

米軍の感染対策をめぐっては、在日米陸軍司令部が昨年12月3日から、同司令部から150キロ圏内の関東平野にある基地外のレストランや食堂、飲食店での外食を禁止する指令を発令した。また、首都圏1都3県(東京、神奈川、千葉、埼玉)の人口密集地を「立ち入り禁止」に定めた。

関東平野150キロ圏内での外食禁止を命じた在日米陸軍の地図。赤色部分は「立ち入り禁止」地域(2020年12月2日のフェイスブック投稿から)

振り返れば、米国は福島第一原発事故時も、2011年3月16日午後(日本時間の17日未明)の早い段階で、日本在住の米国民に対し、福島第一原発から半径50マイル(約80キロ)の退避を決めた。米海軍は空母にしても潜水艦にしてもすべて原子力駆動であり、海軍は放射能に対して厳格に管理し、注視している。ちょっとでも放射能漏れがあれば、乗組員全員が死んでしまう事態になりかねないからだ。

放射能と同じように、米軍は新型コロナといった感染症も危機管理上、厳格に注視している。特に今春に米海軍の原子力空母「セオドア・ルーズベルト」で新型コロナの集団感染が起き、大問題になっただけに、今や危機感が一層強い。日本国民は福島第一原発事故時のように、日本政府の情報とは別に、在日米軍の危機管理対策を参考に知っておいて損はないだろう。

(Text by Takahashi Kosuke)無断転載禁止

© 高橋浩祐