河北春秋(1/9):1960年、当時の岸信介首相の私邸に、日…

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 1960年、当時の岸信介首相の私邸に、日米安保条約改定に反対するデモ隊が連日押し寄せた。岸氏のそばで、デモ隊をまねて無邪気に「安保反対」と叫んでいたのが、孫でまだ5歳の安倍晋三前首相だった▼6月15日には、国会内に突入したデモ隊と機動隊が衝突し、東大生の樺美智子さんが亡くなった。安保条約は国会で強行採決され、岸氏は混乱の責任を取って内閣総辞職した▼61年後、安倍氏の盟友だったトランプ米大統領の支持者が、バイデン次期大統領の当選を正式に認定する手続き中の連邦議会議事堂を一時占拠した。支持者ら5人が死亡した。民主主義の優等生だったはずの米国で起きた許しがたい暴挙だ▼しかも、トランプ氏は事前の大規模集会で、支持者に議会へ向かうよう「扇動」していた。きのうになって、議会占拠を非難したものの、自身の責任には触れずじまい。国内外から批判が殺到し、閣僚の辞任が相次いだほか、解任論も出る始末。最後の悪あがきが自らの首を絞め、孤立を深める結果となった▼この4年間、世界中の耳目を集めた「トランプ劇場」は、支持者の熱狂的な歓声と、それをかき消すブーイングの中、分断の深刻化を再度露呈してひとまず幕を閉じた。二度と見たくない。大方の偽らざる本音だろう。(2021.1・9)