上瀬谷は説明会開催も、IRは中断 新庁舎の執務室施錠… 横浜市政に市民不信感

新市庁舎内の様子。執務室は施錠され、来庁者は内線で職員を呼ぶ必要がある

 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の市民説明会中断、市会傍聴席のやじ規制、新市庁舎の執務室施錠-。横浜市政を巡る最近の出来事が、市民の不信感を募らせている。「市民の声が届かない」「主人公は市民ではないのか」。一連の動きに危機感を覚えた市民の間からは、地方自治の在り方を問う動きも新たに生まれ始めた。

 2019年8月。それまでの「白紙」から一転、林文子市長がIR誘致を表明した。市長自ら市内18区をまわる説明会を同年12月に始めたが、コロナ禍の影響で昨年2月下旬以降は延期に。結局、6区(戸塚、都筑、栄、青葉、瀬谷、泉区)での実施は見送られ、代わりに市長が説明する動画が配信された。一方で、上瀬谷通信施設跡地(同市瀬谷、旭区)の開発計画を巡る地元住民向け説明会は昨年8月に計4回開かれ、計約500人が参加した。

 市の担当者は説明会の開催可否について、「上瀬谷はコロナを考慮して人数制限などの対策を講じたが、IRはコロナを想定していない状況で人数を決めていた上、参加者以外に反対する人たちが来てしまうので対策が難しい」と話すが、市議の一人は「説明会ができないわけではない。IRの動画配信は、市長が説明したというアリバイづくりにすぎない」と批判する。

 そんな中、市会では同月に傍聴規則が改正され、傍聴人の“やじ”が開会中にとどまらず、開会前や休憩中、閉会後まで禁止された。IR誘致を巡り、反対する市民からのやじが増えたことが背景にあるが、制止されても騒いだ場合、職員の判断で再入場ができなくなる。有識者は「節度を守る必要がある」としつつ、「傍聴は市民の権利。剥奪は越権行為」と指摘する。

 さらに、昨年5月に移転した北仲通南地区(同市中区)の新市庁舎にも、市民の不満がくすぶる。市は「個人情報保護やセキュリティー強化」を理由に窓口業務のない部署は常時施錠としているが、市役所としては全国でも異例の対応。来訪した市民は「職員の執務状況が見えない」と、戸惑いを隠しきれない様子だ。

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