多様な社会の原動力に 新たな消費の主人公へ
次世代を担う主役として世界で注目を集める20歳前後の「Z世代」。デジタル社会の中で成長し、社会問題への関心も高いとされる彼らがポストコロナの時代をどう築くのか。Z世代の学生と日々向き合う宮崎大地域資源創成学部の土屋有講師(40)=マーケティング論=に特徴や可能性について聞いた。
-Z世代の特徴は。
社会問題への意識が高いとされるが、時代背景が影響している。経済の停滞や東日本大震災、コロナ禍と、正義とは何か生きるとは何かを問われるような出来事の中で育ってきた。SNSなどを通して性的少数者(LGBTなど)や気候変動などの情報に触れる機会も多く、多様な価値観があることは常識で、社会問題に関心を持っている。共働きや女性の活躍も当然と受け止め、そういった考え方を土台に、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の重要性も理解している。
(幼い頃からSNSなどを使いこなす)デジタルネーティブであり、上の世代に比べて自らの問題意識をSNSなどで発信することに抵抗も少ないようだ。教え子の中にLGBT当事者がいたが、性的指向を偽ることなく賃貸などの社会的サービスを受けられるビジネスプランを公式の大会で提案したケースもあった。
-なぜ世界で注目され始めたのか。
消費社会の中心にZ世代が台頭してきたことが大きい。社会問題への高い意識や多様な価値観を持つZ世代に向けて商品やサービスを提供するために企業が意識を変え、それに伴い社会も変化する。消費を入り口に、従来の価値観を変える可能性があるという意味でも、注目されているのではないか。
-政治への関わりは。
米国では、Z世代の動向が昨年の大統領選の勝敗に大きく影響した。日本のZ世代も政治への関心は高いが、深く関与した例はまだ少ない。選挙活動などに本気で関われば、ネットでの発信力を武器に他の世代も巻き込んで大きな流れを作る可能性はあると思う。
-ポストコロナの社会に、どう影響を与えるだろうか。
コロナ禍で広まったリモートは、Z世代にとってはコロナ以前も当たり前のものだった。彼らが進めるデジタル化で社会の合理化、効率化はさらに進み、従来のルールを見直すきっかけになるだろう。
一方、既存の価値観に絡め取られると可能性がつぶれかねず、ネットの情報はフェイクも多い。Z世代が問題の本質を見抜く力を身に付け、異なる世代と学びあうことができれば、多様で持続可能な社会を築く原動力になるのではないか。
(宮崎市・宮崎大木花キャンパスで)