襲撃扇動で窮地のトランプ大統領 亡命するならイスラエルとロシアなワケ

落日のトランプ大統領(ロイター)

米民主党は11日(日本時間12日)、トランプ米大統領(74)が6日に「支持者たちの反乱を扇動した」とする弾劾条項を含む訴追決議案を連邦議会下院に提出した。可決されれば、米国史上初となる同一大統領の2回目の弾劾訴追に。上院で弾劾が決まれば、2024年の大統領選再出馬を狙うトランプ氏にとって大打撃になる。ほかにも数々の嫌疑が消えないトランプ氏は恩赦の道も厳しいとみられ、ついに亡命の選択肢が現実味を帯びてきた。そうなると行き先は――。

民主党は「ペンス副大統領が憲法修正25条を適用してトランプ氏を解任しないのであれば、13日にも弾劾手続きを開始する」との方針を固めた。

これにトランプ氏は12日、「政治史上、最大の魔女狩りの続きだ。激しい怒りが巻き起こっている」と報道陣に語った。

ペンス氏はトランプ氏を職務遂行不能とみなして自身が大統領代理になる修正25条の発動には否定的。民主党のペロシ下院議長らは、ペンス氏が拒否した場合「弾劾手続きを進める」としているが、これも下院の過半数と上院の3分の2の賛成がなければ成立せず、ハードルは高い。

だが、これまで何度もトランプ氏とやり合ってきたペロシ氏はそれも織り込み済みで、実は他に狙いがあるという。

「弾劾手続きをしても、トランプ氏の任期中(20日まで)に弾劾裁判は終わらない。また、任期後に弾劾できるかも司法関係者の間で意見が分かれるところ。そこで民主党はトランプ氏の公職資格を永久停止させて、政治の世界から排除するのではないかとみられているのです。それだと、弾劾手続きと比べて議決のハードルは下がるため現実的」(在米ジャーナリスト)

この策が成功すれば、約3年10か月後の大統領選再出馬を狙うトランプ氏のもくろみは打ち砕かれる。司法当局から数々の嫌疑をかけられているトランプ氏にとっては致命的。恩赦の道もよほどの奇策が成功しない限りは厳しい。刑事訴追の危険を避ける方法として浮上するのは亡命説だ。

トップシークレットの機密情報を握るトランプ氏が亡命となれば、どこの国なのか? 元警視庁刑事で国際安全保障にも詳しい北芝健氏は2つの国を挙げる。

「最も可能性が高いのはイスラエル。ネタニヤフ首相とも懇意で、トランプ氏はパレスチナ問題を抱えるイスラエルを中東各国との和平に導き、エルサレムをイスラエルの首都と認めた実績から英雄視されている。次にロシア。プーチン大統領との蜜月は有名で、トランプ氏の元顧問弁護士も暴露本で明かしている。プーチン氏がどこまで機密情報に興味を示すかは分からないが、有力な亡命先になる」

イスラエルに関しては、トランプ氏の娘婿クシュナー氏の家系がユダヤ人ということもあり、もともと縁が深い。

一方のロシアは先月、国営放送の番組「60分ショー」のキャスターが、トランプ氏に「ロシアに亡命すべき」と発言して話題になった。

民主党が再びトランプ氏を追い詰める現状に、北芝氏は「トランプ支持者は力の信奉者。民主党がトランプ氏を封じ込めようとすればするほど裏目に出る」。トランプ氏の過激支持者らは米連邦議会議事堂に6日に乱入したのに続き、20日の大統領就任式襲撃も予告している。ただ、これはトランプ氏の立場をさらに悪化させかねない。

北芝氏は「トランプ氏が亡命せざるを得ない状況になれば、不正選挙を理由に“亡命政府”の樹立を宣言し、賛同した支持者たちが呼応する可能性は十分ある」とも指摘する。大統領選敗北が濃厚になって以降、次々と主要支持者や元側近に恩赦を乱発してきたのも、共和党、民主党に次ぐ第三極“トランプ党”として将来的な捲土重来を期しているのか。

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