九大など、触覚が痛覚と混信して脳に届かないようにする抑制性神経を特定

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九州大学(九大)と新潟医療福祉大学は1月12日、脊髄の表層に局在する特別な神経細胞の活動が神経障害後に低下することを発見し、それがモルヒネですら効きにくい痛覚が生じる神経障害性「アロディニア」の原因であることを明らかにしたと共同で発表した。

同成果は、九大大学院 薬学研究院薬理学分野の津田誠主幹教授、同・田島諒一大学院生(研究当時)、古賀啓祐大学院生、吉川優大学院生および新潟医療福祉大 健康科学部健康栄養学科の八坂敏一教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、米科学雑誌「米科学アカデミー紀要(PNAS)」にオンライン掲載された。

がんや糖尿病、帯状疱疹、脳梗塞などで神経系が障害を受けた場合、神経障害性疼痛と呼ばれる慢性疼痛が発症することがある。その発症機序は現代でもわかっておらず、また抗炎症性解熱鎮痛薬などの一般的な薬では抑えることができないという厄介な面を持つ。

その中でも、皮膚に軽く触れるような刺激でも痛みが出る「アロディニア」という症状はモルヒネですら効きにくく、治療に難渋するとても厄介な痛みだ。皮膚からの触覚と痛覚信号はそれぞれ区別された神経を伝わるため、通常であれば触刺激で痛みが出ることはない。しかし神経系が障害を受けた場合、なぜか触覚が痛覚に誤変換されてしまうのである。

今回の研究により、別の神経を抑制する作用がある神経細胞が特定された。この神経細胞が正常に働く場合、触覚伝達神経からの信号が脳に痛みを伝える神経を興奮させないようにしているという。しかし神経が障害を受けた場合、その神経活動が低下してしまうため、触覚信号が脳に痛みを伝える神経に入ってしまうのである。つまり今回特定された神経細胞は、触刺激で痛みが出るアロディニアの発症に重要な役割を担っていることが考えられるとする。

なお、神経に障害を受けていない正常のネズミを用いて、この神経細胞の活動を人工的に低下させるという実験が行われた。すると、それだけでアロディニアの発症を再現することに成功したという。さらに、神経障害後に低下した神経活動を高めることで神経障害性アロディニアを緩和することにも成功したとした。

今回特定された神経細胞の活動を高める化合物を発見できれば、神経障害性疼痛などの慢性疼痛に有効な治療薬の開発に対し、新しい大きな道筋を作ることが期待できるという。研究チームは今後、今回特定された神経細胞が活動を低下してしまうメカニズムを解明し、同時に神経活動を高めるための新たな方法も探索していくとしている。