んふふな人間力学、配信で観察可能 城山羊の会『石橋けいのあたしに触らないで』

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▼CMディレクター、映画監督でもある山内ケンジが脚本・演出を務める演劇プロデュースユニット「城山羊の会」、2年ぶりの公演『石橋けいのあたしに触らないで』(2020年12月17~27日、東京・下北沢の小劇場B1)の映像が、1月23日までweb配信(112分。2000円)されているので、お薦めいたします。東京の小劇場でしか公演を打たないため、近郊にお住まいでない人には貴重な機会。クスクス、んふふと笑わされますが、いつになく官能数珠つなぎなため、R15ぐらいかもしれませぬ。

▼誰かれ構わずにはお薦めしませんが、人様の家にお邪魔するのが苦手な方、パーティーでどう立ち回ったらいいか分からない方には、特にお薦めします。見たら苦手を克服できるわけではありません。筆者の私はぎりぎりチケットを買えて劇場で観劇しましたが、映像も見てみました。無観客で撮影されていて、登場人物に寄りすぎず、引きすぎず。上流家庭に透明人間になってお邪魔して、壁際のあたりから、家人と他の客のやり取りを観察しているような感覚です。誰かに感情移入できる起承転結のある物語じゃなきゃダメな方には向いてません。なにせ今作では、途中で登場人物が「わざわざお話するようなことではなかったかもしれませんが」と御丁寧に客におことわりを入れてきます。

▼山内作品は毎度、物語らない。今回も、石橋けいが最も面白く見える役柄だと私が思う「有閑マダム」が、「そういえば、ちょっと太ったかも」と言われてふくれたことで生じる、力学の観察といえましょう。時と所と場に応じた「マナー」ってものを、大人は踏まえているけれど、つい本音が口をつき、ほころびが出てしまう。それでダメージを受けてすねる人、なだめる人、取り繕いたい人、よせばいいのに今の状況を解説して余計に対立をあおってしまう人・・・。すると、隠していた関係までつい、ひょっこりしてしまう。さらに「闖入者アリ」と言うべきか、現れたその人の言葉より身体が、皆さまがかろうじて残しているマナーを無力化してしまいそうになり・・・。

▼出演は、石橋けい、吹越満、米村亮太朗、岩谷健司、島田桃依、岡部ひろき、筒井のどか、岡部たかし。

▼城山羊の会は今作が初めてという方は、視聴後、山内ケンジ監督の映画『At the terrace テラスにて』をご覧になると、姉妹作のような味わいを得られるかと思います。さらには映画『友だちのパパが好き』などにもこれから出逢えるのですから、羨ましい限りです。(敬称略)

(宮崎晃の『瀕死に効くエンタメ』第144回=共同通信記者)

※山内ケンジ監督の新作映画が今年公開予定のようです。