アールデコの魅力にせまる|直線的で芸術的な建築様式。その歴史や特徴、代表的建造物は?

アールデコは建築やインテリアの分野で使われるスタイル。この記事では、アールデコの歴史的背景、建築様式やインテリアとしての特徴を解説。アールデコ様式の有名な建造物の紹介をします。レトロな雰囲気の建物が好きな人は必見です!

アールデコとは

アール・デコとは、「装飾美術」という意味の略語で、建築様式やインテリアデザインのスタイルのひとつ。1910年代頃からフランスをはじめとしたヨーロッパやアメリカで流行した装飾様式で、直線的なデザインが特徴的です。

アールデコの歴史的背景

第一次世界大戦後から第二次世界大戦前、1910年代半ばから1930年代にかけて流行したアールデコ様式。第一次世界大戦前に流行したアール・ヌーボー様式にかわって登場しました。

第一次世界大戦の勃発とともに、装飾性が高く大量生産に向かなかったアール・ヌーボー様式が衰退。アールデコ様式は、ふたつの大戦の間に流行したことから「大戦間様式」ともよばれています。

1925年「パリ万国装飾美術博覧会」が開催される

アールデコ様式が流行するきっかけとなったのが1925年のパリ万博(現代産業装飾芸術国際博覧会)。アールデコという名称も、「Exposition Internationale des Arts Décoratifs et Industriels modernes」の略称から「Art Déco」とよばれるようになったという経緯があります。

「アールデコ展」ともよばれたこのパリ万博によって、世界中にアールデコ様式が広まっていったといわれています。

大量生産が求められる時代

芸術は一部の富裕層の象徴のようなものという認識があった戦前からの価値観が変化し、大量生産が求められるようになった時代。大衆に向けてより合理的で直線的なデザインであることが重視されるようになりました。

装飾的なものより機能性が求められた時代の流れとともに、広まっていったのがアールデコ様式です。

アメリカ合衆国で花開く

パリ発のアールデコ様式は、ヨーロッパよりもむしろアメリカ合衆国で花開くことになります。当時のアメリカは「狂騒の20年代」と呼ばれ、高層ビルが次々に建設されていた時代。

アールデコは革新的なスタイルとして、建築だけでなく映画やジャズといった文化の発展や華やかな都市生活の象徴としてもてはやされました。

そんなアメリカの華々しい20年代も、1929年ウォール街の暴落とともに終わりを告げ、アールデコも終焉を迎えることになりました。

建築におけるアールデコ様式の特徴

アールデコの装飾様式として特徴的なのは、直線的なデザインと幾何学模様のモチーフ。建築やインテリアのいたるところでその様式を見ることができます。

機械による大量生産を目的とした直線的なデザイン

単純化された直線を強調したデザインが特徴のアールデコ様式。手仕事ではなく、機械によって大量生産することを目的に生まれました。華美で享楽的だったアールヌーボーとは異なり、機能的でシンプル、装飾性が低く合理性を重視したのがアールデコ様式です。

定規やコンパスで引いたような幾何学模様のモチーフ

定規で引いたような直線、コンパスで描いたような円、そしてそれらを連続させて柄となった波模様や幾何学模様。

アールデコは、円や正方形、三角形などを繰り返すパターンが多く採用されました。はっきりとした原色が使われるなど多様な色彩のバリエーションがあるのも特徴です。

比較対象とされる「アールヌーボー」との違い

「アール」が頭につくことから、アールデコと比較されることが多いのが「アール・ヌーボー」。アール・ヌーボーも20世紀初頭に流行した様式で、アールデコと言葉が似ているうえ、時代も近いので似たような様式と捉えられがちですが、意味もデザインも異なります。

アールヌーボーとはフランス語で「Art Nouveau=新しい芸術」という意味で、ヨーロッパを中心に広まった様式です。アールデコとは対照的に曲線的なデザインが特徴で、高い芸術性で表現される創造性のある華やかなデザイン。

花や草木といった植物などの有機的なものがモチーフとなることが多く、自然をイメージするようなやわらかい曲線のデザインが多用されました。建築はもちろん、家具やガラス工芸品、食器などあらゆるインテリアに影響を及ぼしたとされています。

建築以外にも様々な分野に影響をもたらしたアールデコ

ヨーロッパやアメリカを中心に世界中の都市で流行したアールデコ様式。大衆向けに大量生産する形で消費され、その影響を受けた分野は建築にとどまらず多岐にわたります。

グラフィックデザイン、家具やインテリアデザイン、ポスターや絵画などの美術や工芸品、ファッション、ジュエリーなど、さまざまな分野に影響を与えました。

アールデコ調の家具やインテリア

合理性や機能性を重視したシンプルなデザインが特徴で、モダンデザインの前兆と言われているアールデコ様式。その潮流は家具やインテリアでもみることができます。

幾何学模様を施した華やかなランプやシャンデリアといった照明類などを含め、インテリア小物であれば現代でも取り入れやすいスタイルだといえるでしょう。

モダンスタイルとの比較

モダンスタイルと比較されることも多いアールデコ様式ですが、中にはアールヌーボーの優雅さを少し残したようなデザインも。

現代のシンプルなモダンスタイルと比較するとレトロな印象ですが、モダンインテリアとの相性はよく、アクセントとして取り入れやすい様式です。

ファッションスタイル

アールデコの流行はファッションの分野にも影響を与えました。それまでの女性らしさのモデルといえば、ウエストが絞られた優美なシルエット。

アールデコの革新的な価値観はドレスのスタイルにも表れ、ウエストを絞らないコルセット不要なドレス、腰の位置が低めで丈が短いなどのデザインが施されたものが登場しました。

欧米では、ショートヘアで丈の短いスカートをはく「フラッパー」と呼ばれるスタイルが流行。幾何学的・直線的なアクセサリーももてはやされました。

ココ・シャネルに代表される女性デザイナーによる革新的な服が登場したのもこの時代。日本では、同様のスタイルが「モボ・モガ」(モダンボーイ・モダンガール)と呼ばれ、1920年代に流行しました。

工芸品

アールデコ期にガラス工芸の分野で活躍したのがルネ・ラリック。アールヌーヴォー期には宝飾工であったルネ・ラリックは、アールデコ期にはガラス職人として活躍しました。

日本ではノリタケがいち早くこの様式を取り入れて商品化し、主にアメリカに輸出することで展開したことで知られています。

ポスターや絵画などの芸術作品

アールデコの時代は、グラフィックデザインが発展し、多くのグラフィックデザイナーやイラストレーターも登場。商業ポスターも大量に生産されはじめました。それにともない、ロゴデザインの世界でもアールデコ調を目にすることができます。

アメリカにおけるアールデコ建築の代表例

多くの有名なアールデコ建築が見られる場所といえばアメリカ・ニューヨークのマンハッタン。アールデコの時代、マンハッタンで高層ビルの建築ラッシュが起こりました。同じデザインが繰り返されるアールデコの特徴が、高層ビル建築に適した様式であったともいえます。

クライスラー・ビルディング

77階建て、高さ319m。世界一の高さを競う超高層ビル建設ブームの真っただ中だった1930年に竣工されたのがクライスラー・ビルディング。建築当時は世界一の高さで、アールデコ建築の最高傑作といわれ、ニューヨークマンハッタンのシンボルのような存在となっています。

エンパイア・ステート・ビルディング

1931年の竣工、地上102階建て、頂上までの高さ443 mのエンパイア・ステート・ビルディング。ニューヨークの中心部マンハッタン5番街に、世界一の高さであったクライスラー・ビルディングを超える高さで世界初の100階を超える高層ビルとして完成しました。

まさにアールデコの典型的な装飾がほどこされたビルとして多くの観光客が訪れるスポットになっています。

ウォルドルフ=アストリア

ウォルドルフ=アストリアは、ニューヨークマンハッタンのミッドタウンにあり、アメリカを代表する高級ホテルとして建築されました。

建物の内外のデザインにアールデコ調が取り入れられ、マンハッタンのランドマークとして有名。数多くの映画の舞台としても登場しています。

エセックスハウス

1931年に、セントラルパークを見下ろす高級ホテルとしてマンハッタンに開業したのがエセックスハウス。複雑な買収の歴史があるホテルですが、当時は、重厚な高級感とアールデコ様式を取り入れたモダンな雰囲気が斬新な建築物として名を馳せました。

ラジオシティ・ミュージックホール

赤いネオンサインが目をひく外装ながら内装はアールデコ様式の劇場「ラジオシティ・ミュージックホール」。マンハッタンのロックフェラー・センターにあり、最大級のシャンデリアなどが豪華。観劇でなくても劇場見学に訪れる観光客も多い人気スポットです。

日本の建築におけるアールデコ

もともと日本の文化が影響を与えたとも言われているアールデコ。ヨーロッパやアメリカで流行し、日本にも伝わりました。代表的な建築物だけでも数多くあります。

港区白金台東京都庭園美術館

旧朝香宮邸であった建物を利用し1983年に開館した美術館です。多くの芸術品を展示しているのはもちろん、緑豊な庭園とアールデコ様式としてその建物自体が有名。日本に現存する代表的なアールデコ建築です。

香水塔

アールデコ様式で統一された本館の建築が特に美しく、フランスのアンリ・ラパンのデザインによる『香水塔』は、朝香宮家の人々がこの噴水内に香水を入れて香りを楽しんだといわれています。

山の上ホテル旧館

千代田区の神田駿河台にあるホテル「山の上ホテル旧館」は開業以来“文化人のホテル”として文豪たちに愛されたクラシカルな雰囲気が魅力的な建物。1936年に完成した旧館はアールデコ調のデザインを色濃く残しています。

伊勢丹新宿本店

東京都の歴史的建造物に選定されている「伊勢丹新宿本店」。長い歴史の中で改修を繰り返しながらも、アールデコ様式の繊細で直線的なデザインを守り続けています。

デパートとしては日本橋にある三越本店も店内に美しいアールデコ調の装飾があり、リッチな気分で買い物を楽しむことができます。

その他の国内のアールデコ様式の建造物

神奈川県庁本庁や大阪府庁舎など、今は自治体の施設となっている場所でもアールデコ様式を見ることができます。

建築物ではありませんが、山下公園に停留している氷川丸の装飾もまさにアールデコ様式そのもの。1930年に建造された船内では、天井や照明といったインテリアにアールデコ調が集約されています。

意外な場所で出会うことができるアールデコ様式の建築物。実物を一度目にしてみると、その美しいデザインの魅力を感じることができるはずです。

自分好みの家を買うならリノベーションがおすすめ

内装やインテリアにこだわりたい人が家を買うなら、「中古物件購入+リノベーション」がおすすめです!

中古とはいえ、内装を取り壊して初めから組み立て直すため、設備の交換、壁紙・床の張り替えから、間取りの変更までできてしまいます。

リノベーションってなに?もっと詳しく知りたい!という方にはLogRenoveが主催する「初心者向けリノベーション基礎講座」がおすすめです。

セミナーに参加する

© 株式会社プロポライフグループ