GG賞逃した阪神近本が満点、中日大島は低評価 アナリストが選ぶ名手は?【外野手編】

阪神・近本光司(左)と中日・大島洋平【写真:荒川祐史】

右翼手トップが日本ハム大田、2位には広島鈴木ではなく巨人松原がランクイン

米国には、データアナリストが選手の守備を分析し、その結果から優秀守備者を表彰する「Fielding Bible Awards」という賞が存在する。これに倣い、株式会社DELTAではアナリストの協力のもと、「1.02 FIELDING AWARDS」というNPBの優秀守備者を表彰する企画を開催している。

「1.02 FIELDING AWARDS」では、今年は9人のアナリストが各々の分析手法で選手の守備貢献を評価。今季各ポジションを500イニング以上守った12球団の選手を対象に順位付けし(1位:10点、2位:9点……)、最も多くのポイントを獲得した選手を最優秀守備者とした。今回は外野の各ポジションでどのようなランキングになったかを紹介する。

右翼手部門では、アナリスト全員から1位票を集めた大田泰示(日本ハム)が受賞者となっている。ゴールデン・グラブ賞においてもパ・リーグの外野手部門で、2位の168票を獲得したが、データの面から見てもその守備力は確かだった。

大田は打球処理貢献、また走者の先の塁への進塁を阻む進塁抑止の2つの項目で高い評価を残し、それが満場一致の1位に繋がった。ただ、この2つの要素を個別に見ると、2位以下にも大田並の貢献を見せた選手がいたようだ。

2位となった松原聖弥(巨人)には9人のアナリストのうち8人が2位票を投じた。進塁抑止においては大田に差をつけられたが、打球処理についての評価では、1位というアナリストの分析もあった。大田が今季右翼で940イニングを守ったのに対し、松原は574.2イニング。少ない出場機会の中で健闘を見せたといえるだろう。

外野手の得点ランキング【画像提供:DELTA】

近本が満点の中堅手ではGG賞の大島や西川は低評価に

3位のレオネス・マーティン(ロッテ)は松原が大田に差をつけられた進塁抑止において高い貢献を残した。打球処理については平均よりも劣るという声もあったが、その圧倒的な強肩を武器に走者の進塁を阻み、右翼手3位となっている。走者をアウトにするだけでなく、タッチアップを抑止するなど、進塁をためらわせる力も秀でていたようだ。

セ・リーグでゴールデン・グラブ賞を受賞した鈴木誠也(広島)は本企画のランキングでは7人中4位。3位が3票、4位が3票、5位が2票、6位が1票と、どのアナリストも中位前後とする採点結果に終わっている。

中堅手部門は全アナリストが1位票を投じて90点満点を獲得した近本光司が受賞者となった。近本はゴールデン・グラブ賞を受賞できなかったが、この企画においてはその圧倒的な守備範囲が高く評価されたようだ。

ゴールデン・グラブ賞外野手部門では、この中堅から柳田悠岐(ソフトバンク)、大島洋平(中日)、西川遥輝(日本ハム)の3名が選ばれた。ただ、彼らは本企画においてはそれぞれ9名のうち3位、6位、9位。データ分析の視点ではトップクラスの評価を得ることができなかった。近本に次ぐ2位となったのは金子侑司(西武)。ただ、その金子も3位の柳田とはわずか2ポイント差の69点と、2位以下は団子の状態となっている。

一般的な中堅手の定位置から見て、どの方向の打球で多く失点を防いでいたかという分析では、右中間後方の打球に強く左中間後方に弱い金子、前方の打球に弱く後方に強い辰己、後方全般に弱かった丸佳浩(巨人)、西川など、選手ごとに処理傾向が大きく分かれた。

左翼手の青木は走者の進塁を防ぐ抑止力が他選手より秀でる結果に

どの外野手も一部の方向には弱点を抱えていたが、近本はほぼ弱点なくどの方向に対してもうまく打球処理ができていたことが分析からわかっている。また打球の滞空時間、一般的な定位置から落下点までの距離の長短という視点でも、近本はオールラウンドな打球処理を見せていたことがアナリストの分析で明らかになっている。

ゴールデン・グラブ賞の外野手部門はセパそれぞれ3人ずつ選出される。ただ、基本的に外野手で守備力に秀でた選手は中堅、右翼に集まるため、左翼手でゴールデン・グラブ賞獲得者が出るのは稀だ。そんな中で今季は青木宣親(ヤクルト)が左翼手ながら同賞を獲得している。

「1.02 FIELDING AWARDS 2020」の左翼手部門でも、やはり青木が受賞者に。ただ打球の処理においては、2位の島内宏明(楽天)と接戦の評価だった。走者の進塁をいかに防ぐかという点で青木が図抜けた成績を残したことで、青木が高評価となった。

ただアナリストによっては島内を1位に挙げるものもいた。打球エリア別の傾向を見ると、青木が前方の打球で多く失点を防いでいた一方、島内は後方の打球に強かったよう。3位以下は佐野恵太(DeNA)、近藤健介(日本ハム)と続いた。佐野は前方の打球に強く後方に弱い、近藤は左中間に強い一方で、レフト線に弱いという傾向が表れていた。

5位以下にはジェリー・サンズ(阪神)、ホセ・ピレラ(広島)、コーリー・スパンジェンバーグ(西武)と外国人選手勢が続いた。いずれも打球処理の面ではそれほど大きな弱点となったわけではなかったが、進塁抑止の面で大きなマイナスを作っていた。スパンジェンバーグは、打ってから一塁に到達するまで最速で4秒を切る俊足だが、その走力を左翼守備では生かせていないという声もあった。(DELTA)

DELTA
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』も運営する。

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