船木誠勝が語る破壊王・橋本真也 右手にナイフを持ち…「長州を倒してやる」

これもやらかした直後?船木㊧にローリングソバットを叩き込む坊主頭の橋本(1986年6月)

ハイブリッドレスラー・船木誠勝(51)が、これまでに遭遇したさまざまな事件の裏側や真相を激白する新企画がスタート。今回は「新日本プロレス巡業事件簿」だ。数々の事件があった中で、特に印象に残っているのは故橋本真也さんが起こした3回の事件だとか。最後は〝長州力刺殺計画〟にまで発展したというのだからブッ飛んでいる。船木が語る真・破壊王伝説をご堪能あれ。

【THE FACT~船木が見た事件の裏側(1)】新日本プロレスの若手は何か不始末すると丸坊主っていう決まりがありました。橋本選手は自分が新日本にいた4年ほどで3回坊主になっています。

1回目の坊主は、東北の旅館に坂口(征二)さんのカバンを置き忘れてきたことです。興行の売上金とか全部入っていたんで、さすがに言い訳もせず黙ってひとりで電車に乗って取りに行ってました。ただ、帰ってきたら坂口さんの付け人はクビ。野上(彰=現AKIRA)さんに代わってましたけどね。

2回目は名古屋のホテルでの出来事です。破壊王は酒を飲んで夜中にゴキゲンで帰ってきたんですよ。廊下で大声で話してました。クロネコ(ブラック・キャット=故人)さんが出てきて「あなた、うるさいよ」って言ったんです。そしたら橋本選手は「うるせー、ブタネコ」って。

ネコさんは「あなた、もう一回それ言ったら殺すよ」と薬箱からアイスピックを取り出したんですね。それを見た橋本選手は「ナニっ、ヤルか!」と横にあったルームサービスのフォークを持って構えたんですよ。もう一触即発です。同じフロアの宿泊客が怖がって逃げていくほどでした。

自分は蝶野(正洋)さんと部屋から顔を出して見てました。どうしようと慌ててたんですが、蝶野さんは「ほっときゃいいよ、やらせとけ」って(笑い)。結局、ザ・コブラ(ジョージ高野)さんが止めたんですが、この騒ぎで橋本選手はまた丸坊主になりました。

3回目は試合です。確か九州だったと思うんですが(注・1987年6月3日、北九州市・西日本総合展示場大会)、ジャパンプロレスの一員として出戻りしてきたヒロ斉藤さんを骨折させたんです。技も受けずに蹴りまくって手の甲を砕きました。

試合前から「今日はやる!」と言っていたそうです。前年にUWFが戻ってきて、今度はジャパンが帰ってきた。新日本を一度出て行った人が注目されることが許せなかったと聞いています。それに(ドン)荒川さん(故人)に「移籍のたびに大金をもらっている」などと吹き込まれたこともあったんでしょうね。

試合後、ジャパンの控室から壁にドンドンぶつかるような音と怒声が聞こえてきました。あ、橋本選手が制裁を受けていると思いましたね。なかなか収まらず、観客もリング上の選手もそっちに気を取られている状態でした。あとで聞くと、長州さんとマサ斎藤さん(故人)の2人がかりで椅子で殴られ、鼻血を出してあおむけで倒れてたそうです。

次の日、橋本選手は巡業から外れて帰京しました。残り番で道場にいた鈴木みのるによると、橋本選手はこう言っていたそうです。「2人がかりでリンチは許せない。特に長州。次やってきたら倒してやる」と。そして実際に右手にナイフを持って、椅子を左手で払って刺すという練習を繰り返していたそうです。

橋本選手は海外武者修行でも干されたりして、いろいろ問題がありました。でも、純粋でした。本当に新日本プロレスを一番愛した男だと思います。それに一番ダメだった人間がレスラーとして一番輝いた。すごいなと思いますね。人生どう転ぶか分からないと思いました。

ちなみに自分は橋本選手と同期入門で、亡くなる直前に対談しているんです。破壊王の人生を見届けたような感じがしますね。

☆ふなき・まさかつ 本名は船木優治(まさはる)。1969年3月13日生まれ、青森県弘前市出身。84年、新日本プロレスに入門。翌年に15歳11か月の史上最年少デビュー(当時)を果たした。89年、UWFに移籍。その後、藤原組を経て93年にパンクラスを設立。ヒクソン・グレイシーに敗れ引退したが、2007年に現役復帰。現在はフリーとして活躍。181センチ、90キロ。主なタイトルは3冠ヘビー級王座。得意技は掌底など。

☆はしもと・しんや 1965年7月3日生まれ。岐阜県土岐市出身。84年、新日本プロレス入門。海外修行から帰国した後は同期の武藤敬司、蝶野正洋とともに闘魂三銃士として活躍。「負けたら即引退」と公約した一戦で小川直也に敗れ新日本を解雇され、ゼロワンを旗揚げ。ノア、全日本、ハッスルなどのリングにも上がったが、2005年に脳幹出血を発症し死去。享年40。得意技はキック。主なタイトルはIWGPヘビー級王座。183センチ、135キロ。

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