聖福寺 重文4棟修復へ 10年で18億円、年度内にも着手 長崎

年度内にも修復工事が始まる聖福寺の山門=長崎市玉園町

 長崎市玉園町の唐寺、聖福寺(しょうふくじ)(田谷昌弘住職)は、本堂の「大雄宝殿」など老朽化が深刻な重要文化財4棟の一括修復工事に年度内にも着手することが、同寺などへの取材で17日までに分かった。試算では、10年間計18億5千万円を要する大掛かりな内容。文化財保護法などに基づき、費用の9割超を国などが補助する方向。
 同寺は中国の影響を受けた禅宗の一派「黄檗(おうばく)宗」の寺院で、江戸時代前期の1677年創建。4棟は97年建立の大雄宝殿と、1700年代前半に建立された「山門」「天王殿」「鐘楼」。いずれも風化や破損が激しく、倒壊の危険も指摘されている。中国伝来の黄檗寺院の特徴や長崎独自の様式を残しており、2014年に重文指定された。
 修復は費用の工面が難航し遅れていたが、重文指定で国庫補助の活用が可能に。同寺の財政状況により、国の補助率は最大85%になる。県市の支援もあり寺側の負担は全体の6.25%の見通し。負担は年度ごとに順次必要で、総額や補助率は変動する可能性もある。同寺の資金と、市民有志でつくる「長崎聖福寺修復協力会」が集める募金で賄う予定。
 工事は一般道路に面した山門を解体、保管した後、階段を上った境内にあるほかの3棟を修理し、最後に山門を組み立てる計画。同寺は昨年、文化庁に本年度事業費1千万円に対する補助を申請し、850万円(85%)の補助が決定した。来月初めに施工業者を決めた後、準備工事に着手し、新年度から山門の解体が本格化する見通し。
 同寺は幕末の「いろは丸事件」で、坂本龍馬と紀州藩が補償交渉をした場所としても知られる。田谷住職(49)は「修復は先々代からの目標で、やっと着手できる。文化財を残すため、こつこつとやりたい」と話している。
 修復協力会は10年から活動。既に約3300万円を集めているが、残り約5500万円を目標に募金活動を続ける。同会世話人代表の一人で同市の宮川雅一さん(86)は「工事が始まるのは感慨無量。引き続き募金の呼び掛けに努めたい」としている。

聖福寺の建造物位置図

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