「いなりっこ」も中止 郷土芸能を直撃

昨年2月に海南神社の神楽殿で奉納された「いなりっこ」=三浦市三崎

 三浦市の郷土芸能を新型コロナウイルスが直撃している。15日の「チャッキラコ」に続き、毎年2月11日に行われる市指定重要無形民俗文化財の「いなりっこ」も、感染防止のため初めて中止となることが分かった。海南神社(三崎)に伝わる「面神楽」の子供版として後継者育成の役割を担うだけに、関係者の落胆は大きい。

 いなりっこは、中学3年までの子どもたちが面を着けて踊る仮面黙劇。五穀豊穣(ほうじょう)を願う「稲荷講」がなまったといわれる。

 江戸後期に伝えられたとされ、一時は衰退したが海南神社青年会などが1970年代に復活させ、現在は「三浦いなりっこ保存会」が後進を育成している。

 例年は2月に同神社神楽殿で奉納するほか、10月に市内で発表会を開催している。しかし、新型コロナの影響で昨年は10月の発表会を中止したのに続き、今年2月の奉納も取りやめとなった。同保存会の会長(70)は「演じるには練習も相当必要。子どもたちを預かる立場として、感染防止を最優先した」と説明する。

 千年以上の歴史を誇る同神社に伝わる神事「面神楽」の演者らはいなりっこの経験者が大半を占め、会長もその一人。「後継者育成には小さい頃からの体験が大事。その意味では、練習できなかったことを含めて中止は痛い」と残念がり、新型コロナの早期収束を願っていた。

 同市内では昨年、いずれも県指定無形民俗文化財の「三戸のお精霊流し」(8月)と「菊名の飴屋(あめや)踊り」(10月)も中止となった。

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