『KCIA 南山の部長たち』手に汗握るラストシーンがすごすぎて息もできない!

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 1979年に韓国の大統領が、忠実だったはずの側近に暗殺された実際の事件を映画化した実録サスペンス。

 大統領直属の諜報機関である中央情報部、略称KCIAの現役部長が大統領を射殺するまでの40日間を描きますが、実際に起きた事件を映画化しているだけあって全編に流れる緊張感は半端じゃない。一歩間違えたら、拷問や暗殺が待っているという恐ろしい状況下で進められていく諜報戦は手に汗握る展開。揺れる男の心情を見事に演じているのは、韓国の大スター、イ・ビョンホンです。ある意味、直属の閣下からの度重なる自尊心を傷つけられる行為によって、忠誠心を削られていく姿は本当に気の毒になってくる。権力を使ったネチネチした嫌味な会話、嫌がらせやいじめのような行為が本当に腹立たしい。彼が大統領を殺した理由って、きっと色々あるのだろうけど、あの大統領を観ているだけでそりゃ裏切りたくもなるわって心から同情したし、静かで真面目な人間ほど、怒りが爆発した時って恐ろしい。イ・ビョンホンの表情、音楽、会話のテンポ、ラストシーンの切迫感は、あまりにもすごすぎて息をするのも忘れました。

 私が生まれた年の韓国のお話なので恥ずかしながら知らないことだらけだったのですが、映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』『1987、ある闘いの真実』など近年韓国で映画化されている光州事件前後、韓国が民主化へと変わる時代の話。香港で若者たちが民主主義を守るために命をかけて戦っている今だからこそ、アジアに生きる1人として隣国の歴史について改めて知ることができた作品でした。★★★★☆(森田真帆)

1月22日から全国順次公開

監督:ウ・ミンホ

出演:イ・ビョンホン、イ・ソンミン、クァク・ドウォン

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