スタックなぜ発生 解明徐々に 新潟大と福井大の研究者

大規模な車の立ち往生が発生した関越道。車のスタックなどが発生の原因とされる=2020年12月18日、南魚沼市

 昨年12月に関越道で発生した車の立ち往生など、大雪の際に交通障害の一因となるスタック(タイヤが雪にはまって動けなくなる状態)について、福井大と新潟大の研究者が発生メカニズムの解明を進めている。タイヤと雪の摩擦熱で雪が溶け、さらにタイヤが沈み込む過程などを突き止めた。

◎前進力より後退力上回る→空転で摩擦熱 雪溶け車輪沈む

 トラックなどの大型車のスタックを研究している福井大学学術研究院工学系部門の藤本明宏准教授がリーダーとなり、2018年度から研究を進めてきた。新潟大学災害・復興科学研究所の河島克久教授が監修。19年1~2月、福井県内の除雪基地で雪上に人為的にくぼみをつくり実験した。現在は場所を雪質や気象条件が異なる魚沼市に変え、実験を続けている。

 福井県での実験では、くぼみの深さや傾斜角などを計測し、トラックがスタックするまでの状況を調べた。スタックした際、車の前進しようとする力より、車の重みやくぼみの傾斜が急になってタイヤが落ち込む力(後退力)が上回るとスタックが発生する=図参照=。

 さらに、スタックしてもアクセルを踏み続けると、タイヤが空回りして雪との摩擦熱が発生。その熱で雪が溶け、さらに抜けられなくなることも分かった。

 タイヤにチェーンを装着した場合の効果も調べた。トラックに水槽を載せ、重さを変えて実験。車にかかる重さとくぼみの深さを同じにした場合、チェーン未装着車では深さ6センチのくぼみでスタックした。一方、装着車では6センチでは脱出できたが、8センチになるとスタックした。チェーンは有効ではあるものの、一定量の積雪があればスタックの恐れがあることを示した。

 魚沼市での実験では、雪の状態やタイヤの動き、道路の状況とスタックの関連について、さらに詳細に検証する。

 藤本准教授は「今後も実験を続けてデータを蓄積し、スタック発生のメカニズムをさらに明らかにしたい」と話した。

◎圧雪なら早めのチェーン有効

 本県など日本海側の各地で大雪となり、スタックに伴う立ち往生が相次いだ。藤本明宏准教授にスタックを未然に防ぐポイントを聞いた。

 藤本准教授は、特に大型車はチェーンを携行し、大雪が予想される場合や路面が圧雪の状態(白路面)の場合は早めの装着が有効と指摘する。ただ、アスファルトが露出している「黒路面」が続くような所ではチェーンの破断がする場合がある。白路面と黒路面が交互に発生するトンネル連続区間などでは注意が必要という。

 高速道路にチェーン規制をかけると、携行していない車が一般道などへ集中する懸念がある。藤本准教授は「広域迂回(うかい)などによる交通量の低下がセットでないと、別のどこかに交通が集中して立ち往生が起こる」とし、「ドライバーが早めに移動ルートの変更などを判断することも重要」と指摘した。

© 株式会社新潟日報社