読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、51歳、会社員の男性。会社の対人関係に疲れ、リタイアを希望している相談者。そのための資金がなかなか貯まらないといいます。どんな選択肢があるのでしょうか? FPの氏家祥美氏がお答えします。
現在、運送会社で勤務しているが、対人関係に疲れリタイアを検討しています。リタイアのための資金が貯められません。また今年、両親が他界し一人暮らしです。どうすればいいのでしょうか。
【相談者プロフィール】
・男性、51歳、会社員、独身
・住居の形態:持ち家(戸建て)
・毎月の世帯の手取り金額:20万円
・ボーナスの有無:なし
・毎月の世帯の支出の目安:15万円
【毎月の支出の内訳】
・住居費:0円
・食費:2万円
・水道光熱費:3万円
・保険料:5万円
・通信費:2万円
・車両費:1万円
・お小遣い:2万円
【資産状況】
・毎月の貯蓄額:8万円
・現在の貯蓄総額:700万円
・現在の投資総額:0円
・現在の負債総額:0円
氏家:こんにちは。ご相談いただきありがとうございます。現在、退職しようか検討しているということですね。退職を含めてこれからの仕事についてと、老後の生活資金について、一緒に考えていきましょう。
休息が必要です。心身の疲れを癒しましょう
現在51歳で独身のご相談者さん。昨年、ご両親が他界して現在ひとりで暮らしています。大切なご両親を失った喪失感は大変なものでしょう。しかも長引くコロナ禍の影響もあり、気晴らしもできないままに、おひとりでご両親を失った喪失感や寂しさと長く向き合われてきたのではないでしょうか。
それに、対人関係がうまくいっていないということから勤務先が大きなストレス源となっています。働く目的も見いだせずに、「辞めたい」と思ってしまうのも無理のないことでしょう。
ご相談者さんには、今、休息が必要です。将来について前向きに考え、冷静な判断を下すには、元気な心と身体が大前提です。まずは数日間、仕事を休んで、ゆっくり睡眠をとって体の疲れを取りましょう。
続いて、コロナ禍が落ち着いたら、気分を変えるために別の土地に旅に行ってみてはどうでしょうか。旅が難しければ、自宅のインテリアを大胆に変えてみるのもいいかもしれません。いつもの暮らしから少し離れて、気分を変える工夫をしてみましょう。
「そんなまとまった休暇なんて取れない」状況かもしれませんが、急に会社を辞められてしまったら、会社にとっても大きな損失です。何か口実を見つけるか、残っている有給休暇など使える制度を使うなどして、辞める前に「休む」ことにまず挑戦してみてください。
完全リタイアにはまだ早い
元気が戻ってきたら、今後について冷静に考えていきましょう。
現在の年齢は51歳。まだまだお若く、働ける年齢です。持ち家があり、700万円の預貯金があるという事ですが、仮に今リタイアをした場合、1カ月の生活費が15万円ですから、1年間で少なくとも180万円は必要です。4年間だと合計720万は必要になりますから、現在の預貯金700万円は4年以内になくなる計算になります。潤沢に退職金をもらえない限り、今現在のリタイアは現実的でないことが分かります。
3つの選択肢から働き方の検討を
何らかの形で働き続ける場合には、大きく3つの選択肢があります。
(1)今の会社を継続して別の支店や店舗に移動願いを出す
(2)同業他社への転職を検討する
(3)まったく違うことにチャレンジする
このうち、(1)が一番リスクの少ない方法です。現在の仕事が嫌いではなく、目の前の人間関係だけが問題ならば、上司に相談をしてみましょう。上司との相性が悪いならばさらにその上司や人事に掛け合ってもいいでしょう。100%うまくいくとは限りませんが、自分から退職を願い出る前にやってみる価値はあると思います。新たな仕事を覚える必要がなく、収入も維持できます。
いまの勤務先で異動などの選択肢がない場合には、(2)同業他社への転職、を検討しましょう。なかなか厳しいご時世ですが、運送関係はコロナ禍で忙しくなっている業界ですから、経験者であれば新たな仕事先は見つかりやすいと思われます。求人情報を探すところから始めてみましょう。
もう、運送業界自体が嫌になったという場合や、実はひそかにやってみたいことがあるという場合には、(3)まったく違うことにチャレンジする、が候補になります。ただし、いまは世の中的にとても厳しい状態ですから、求人は減少傾向にあります。特に、年齢が50代で未経験分野への転職となるとかなりの厳しさが予想されます。自分で起業をするという方法もありますが、生活できるようになるまでには数年かかるかもしれません。経済的にも精神的にもいちばん厳しい道となるでしょう。
以上より、現実的な選択肢は(1)か(2)となりそうです。できそうなことから始めてみてください。
保険料と通信費を見直して
毎月の家計支出15万円の内訳を拝見すると、保険料が5万円、通信費が2万円、水道光熱費が3万円と固定費の大きさが目立ちます。それに対して、1カ月の食費が2万円、お小遣いが2万円と、あまり遊んだりせずに堅実に暮らしていることが伝わってきます。
保険料の5万円には、国民健康保険料や年金保険料なども含まれているでしょうか? 社会保険料は会社から天引きされていて、ここで書いていただいた保険料5万円がすべて民間の保険会社への支払いだとしたら、これは支払いすぎです。ひとり暮らしの場合、優先すべきは医療保険。がん保険などもあってもいいと思いますが、死亡保険はお葬式代程度を終身保険で備えておくか、預貯金で確保していれば十分です。掛け捨ての死亡保障は必要ありません。保険を見直してその分貯蓄に回しましょう。
通信費2万円も、1万円以下に減らせそうです。家庭用のWi-Fiがあるなら格安スマホは通信量を抑えた安い料金プランが選べますし、スマホが中心ならばWi-Fiそのものを辞めてしまうこともできるでしょう。
水道光熱費もおひとりで3万円は高いですね。一戸建てだと狭いアパートに比べて電気代等はかかる傾向にありますが、電気やガスの料金プランを自分の生活時間にあわせて見直すことでもっと安くできるはずです。「電気料金 比較」「ガス料金 見直し」などのキーワードで見直しプランを検索してみてください。
見直しができたら楽しみにお金を使って
こうして支出を見直したら、たまには美味しいものを食べにいったり、ファッションにお金を使ったり、普段行かない場所に遠出をしてみたりしてください。普段と違うところに目を向けて、自分の新たな一面を発見し、毎日の中に楽しさを見出しましょう。
新たな趣味や資格取得に挑戦するのもお勧めです。職場以外の場で友人ができたり、新たな趣味に打ち込めたりしたら、仕事のストレスも緩和されますし、達成感も得られます。資格が将来の転職に役立つこともあるでしょう。
固定費を見直せば数万円のお金が浮きます。現在の8万円の貯蓄は維持するとして、固定費の見直しで浮いたお金は新たなチャレンジや楽しみに回してみてください。明日からの毎日が少しずつ変わってくることでしょう。