「恵比寿マスカッツ」の〝父〟が悲壮告白 タワマン住まいから野宿暮らしに転落するまで

ベッドだけの安宿でギリギリ生活を送る中村氏(提供写真)-

フィリピン国家警察の麻薬でっち上げ捜査で逮捕され、半年間も塀の中にブチ込まれた芸能事務所オーナーが苦難の連続を独占告白した。無罪判決を受けたまでは良かったが、現地の元恋人にまでカネを取られ、東京の芸能事務所からの支援も打ち切られ、弁護士も去った。判決から1年5か月近くたった今も帰国できず、新型コロナウイルス禍の首都マニラで極貧生活を送っている。

セクシーアイドルグループ「恵比寿マスカッツ」で活躍した「希軍団」など、多くの人気女優を発掘した中村治久氏(55)に無罪判決が出たのは、2019年8月末だった。

ただ、麻薬でっち上げ捜査で警察に押収された金品(約500万円相当)は戻らなかった。18年6月の逮捕当時まで、約2年半交際していた現地女性にも、預けていた50万円を勝手に使われてしまったという。

その元カノは、違法捜査に加担した現地女性スタッフを中村氏に紹介した張本人だ。

「しかも、私以外に地元の彼氏がいたことも後で分かりました。今は家族持ちらしく、弁護士が何度もアプローチをかけましたが、連絡が取りづらい状況です」と中村氏。

保釈から1か月がたった19年3月、東京の芸能事務所からの支援も途絶えた。社用車の売却話が発端で、中村氏はかねて代表取締役と折り合いが悪かったという。

「居場所がなくなり、16年末からフィリピンでアイドル発掘・育成事業を始めたのも、そんな経緯があったからです」

19年春からは、実弟や高校時代の同級生らに毎月数万円借りる形で支援してもらい「かなり世話と迷惑を掛けてしまった」という。4度の野宿、スリ被害、また昨年10月には知らない男4人組に一時拉致されたとか。

生活拠点は「ベッドスペース」と呼ばれる安宿で、二段ベッドが並ぶ窓ナシの大部屋。1日300ペソ(約650円)の宿代が払えなくなれば、また野宿するしかない。東京にいた時はタワーマンションで暮らしていたというから、もの凄い落差だ。

「これまでは、顔見知りのジプニー(乗り合いバス)運転手に事情を話し、営業が始まるまでの夜間だけ、車内で寝泊まりさせてもらいました」

マニラ首都圏は現在、午後10時から午前5時まで外出禁止。違反者は即逮捕。罰金約1万円で、抵抗した場合は射殺されるケースもあるが「仮に夜間、外にいるところを当局に見られても、路上生活者だけは見て見ぬふりなので、私もその類いと思われ、逮捕はされません」というのが、不幸中の幸いだ。

パスポートは昨秋、現地の日本大使館で更新したが、入国管理局に超過日数滞在費を払わないと、航空券を購入し出国できないそう。

「入管の計算では、不当逮捕された18年6月の入国日から裁判が終わるまでの期間も含まれます。拘束期間は免除してもらえないか、大使館に掛け合ったら『フィリピンの政府機関への介入はできない』と言われました。調整を頼んでいた弁護士とも最近、連絡が取れなくなり、弱っています」

クレジットカードは勾留中に止めたため、使えず、昨年10月、新宿区の福祉課に事情を伝え、融資手続きをしたが、入金はまだ。昨年末には所持金が底をつき「同部屋の中国人と韓国人に食料と水を分けてもらいました」。

年が明けても、金欠状態が続いている。連絡手段はフェイスブックで、現地での窮状を投稿し支援者も募っている。1日1食の生活が長く続き、フィリピン渡航前87キロあった体重は現在68キロに。「栄養不足のせいか、立ちくらみが増えました」

白髪が増え、いつもタオルを巻いたりキャップをかぶったりしているという。

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