世界的なコンテナ不足〜お金の問題ではない輸出制限に今後は?

製造業や商社業、物流業に従事している人なら、恐らく耳にしているであろう今年の世界的なコンテナ不足。一体どのような背景が影響しているのか、現場目線で少しお伝えしてみようと思う。

アジア発の輸出量が増加の一途で、入れる箱が足りない事態に

 島国である日本から海外へ輸出入を行う際、航空便か海上便の選択肢がある。

 航空便に関して、単価は高いが温度管理やリードタイムが短いといった品質の高いサービスのメリットがあり、反対に海上便は航空便と比較して安価な運賃、また納期に余裕がある大口貨物輸送の手段として知られていることが多い。
しかし、昨今その前提が通用しない事態に陥っている。後者に挙げた海上輸送ではコンテナという箱を使用する。貨物船の写真や、港付近などで積み上げられているコンテナを見たことがある人もいるだろう。現在海上輸送に必要なコンテナが足らず、中でも日本では枯渇状態、各方面で苦渋の選択を強いられている。

 例年、アジア発北米向け路線はクリスマス・年末商戦品で夏終わり9月頃から混み合い、10月上旬の国慶節・中秋節後の盛り上がりを過ぎると一時落ち着きをみせる。しかし、今年は落ち着くことがなく、むしろコンテナ不足に陥り輸出制限が出ている。

戻ってくるはずのコンテナが戻ってこない?

 コンテナ不足に起因して、11月後半頃から各船社が日本発輸出の新規案件のブッキングや見積もりをする動きが相次いでいる。急増する荷動きとコンテナ不足により、既存成約分だけでも捌き切るのが精一杯でほぼパンク状態にあると推測できる。船社はアジア域内より北米・欧州向けの長距離航路に、より多くのコンテナを回すのだが、それでも足りないとはどういうことか。

 コロナウイルス感染拡大により、今年4〜6月頃は経済活動が止まっていた国が多かったが、7月頃から他国よりも早く中国回復の兆しが見え輸出物の生産目処が経ってきた。加えて、各国のロックダウンに備えた日用品輸送、在宅ワーク用製品やスポーツ用品など季節を問わない別需要が中国発北米向けを圧迫した。これらの生産国といえば、やはりほとんどは中国だ。船社からすればより稼げるこの路線に、従来よりも盛んにコンテナが割り当てられている。

コンテナが到着した先の北米での、回送状況はどうなっているか?

 西海岸部のゲートウェイ・ロサンゼルス港では港着後、近郊州への配送か内陸部への鉄道輸送に移る。またしても感染症による限られた労働力による深刻な港湾機能の低下、ドライバーとコンテナ陸送に必要な車台不足がたたっている。ネガティブ要因が巡って、港へのコンテナ返却までの日数が通常2日のところ一週間以上掛かっていることも珍しくない。
 当然、西海岸経由の東海岸部・ニューヨーク着貨物に遅延の無い貨物はここ二ヶ月間ほど見ていない。異常事態に運送業者も荷受人も困惑し、代替を航空便輸送でカバーしたり(こちらもスペース確保と高騰している運賃との戦い)と追われている。

 お金を積んでも貨物を受け付ける術がない

 そもそも日本は輸出より輸入が多い貿易構造のため、通常であれば輸出用のコンテナが足りなくなることはあり得なかった。海上運賃の参考数値とすると、アジア発ロサンゼルス向けの海上運賃が通常US$2,000/ 40FEETコンテナ以下のところ、数ヶ月前地点で既にUS$4,000/ 40FEETコンテナレベルで提示する船社が出てきていた。

 言わずもがな、コンテナの需要に供給が追いついていない。コロナ禍の反動で日本含むアジア発の輸出需要が急伸する一方で、海外港湾や内陸の混乱でコンテナが思うように戻ってこない。ブッキング完了していたにも関わらず、船社側も想定外でコンテナ割当が間に合わず、突然「輸送出来ません」と言い渡してくる事例も聞くほどだ。

 現状からより高くお金を払えば貨物を受託してもらえるという状況ではない。
現時点では短期的な改善が見込めないことに頭を悩ませるが、2021年早期にアジア域での新しいコンテナ供給とコロナワクチンが解決の糸口を切り開いてくれることを期待したい。

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