トランプ前大統領の復讐シナリオ 「愛国者党」結成で二大政党制を破壊

諸君、また会おう!(ロイター)

超厳戒態勢のなか、20日(日本時間21日)に史上最高齢となる78歳で第46代米大統領に就任したジョー・バイデン氏はさっそく、次々に大統領令にサインして前政権からの政策転換をアピールしている。これにて“トランプ時代の終焉”かと思いきや、かねて噂される“トランプ新党”結党の動きが報じられた。これを知ったトランプ氏の過激支持者らは大盛り上がり。何やらキナくさい展開になってきたが――。

トランプ氏は最後までおきて破りの大統領だった。

退任する大統領として152年ぶりに新任大統領の就任式に出席しなかったばかりか、首都ワシントン近郊の空軍基地で異例の退任式を強行。集まった支持者たちに「何らかの形で戻ってくる。近いうちにまた会おう!」と言い残し、別荘があるフロリダへ、大統領専用機エアフォースワンで飛び立った。

トランプ氏のおきて破りは、支持者を引き付ける力の源でもあった。自国の産業の発展を妨げるとして、地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」から離脱すれば、関税が不公平だとしてTPP(環太平洋連携協定)からも一方的に離脱するなど、強烈な「アメリカファースト」を打ち出し、多くの支持者を味方につけてきたのは間違いない。

ただ、「大統領選に不正があった」と敗北を認めず、今月6日に過激支持者たちの連邦議会議事堂襲撃を扇動したことで、史上初となる2度目の弾劾訴追が決定。多くの一般支持者が離れる結果を招いてしまった。

残ったカルト的な過激支持者たちは、就任式に合わせて全米中で抗議デモを呼びかけたが、威信をかけた警備当局の前に不発。トランプ氏も去り、このままかつての平穏な米国に戻るのかと思いきや、ここにきてまた過激支持者たちを勢いづける話が出てきたという。

「今、トランプ支持者たちは、ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた『トランプ氏が側近らと新党結党の話し合いをした』という話題で持ちきりだ。具体的に『Patriot Party(愛国者党)』という新党名まで報じられていて、ネットでは『新党』や『愛国者党』といったキーワードが多数検索されるなど、盛り上がりを見せている」(在米ジャーナリスト)

かねてトランプ氏が2024年の大統領選を狙い、“トランプ新党”を結党するのではないか?という噂があったのは事実だ。大統領選後から、元大統領補佐官のマイケル・フリン氏や元首席戦略官のスティーブ・バノン氏ら数々の元側近に恩赦を与えてきたのも、今後の“逆襲”に向けた一連の動きと見る向きもある。

そうなると、退任式でのトランプ氏の「何らかの形で戻ってくる。近いうちにまた会おう!」との言葉も意味深になってくるが、前出の在米ジャーナリストはこう話す。

「過激支持者たちは盛り上がっているが、トランプ氏は弾劾裁判が終わるまで動けない。弾劾裁判が行われる上院の議席数は、共和党50に民主党50。3分の2以上の賛成で弾劾されるが、言い換えればトランプ氏は、共和党の協力を得て3分の1以上の反対を取りつける必要がある。そのためにも今は自ら新党結党を公言して、共和党を怒らせるわけにはいかない」

もしトランプ氏が弾劾されれば、公職資格を永久停止されるという見方が強い。24年の大統領選挙での逆襲を狙っているトランプ氏にとって、弾劾だけは絶対に避けなければならない。

そんなトランプ氏の気持ちを知ってか知らずか、支持者たちは大盛り上がり。トランプ氏がフロリダに到着した際も大勢の支持者たちが国旗を持って出迎え、車列が通ると声援を送るなど、依然高い人気を見せた。

米国の政治は長らく2大政党制が続いてきた。世論調査ではいまだ、国民の3割が支持しているといわれるトランプ氏。弾劾裁判を切り抜けて新党をつくれば、共和党、民主党にとって大きな脅威になるのは間違いない。果たして2大政党制に風穴をあけるおきて破りの新党を結成するのか。民間人となっても、まだまだ目が離せない。

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