【新型コロナ】予約制導入、宣言解除まで休止も…イチゴ狩り試行錯誤 神奈川

できる限りの感染防止策を講じ、イチゴ狩りを行っている「村上いちご園」の村上さん=秦野市戸川

 コロナ禍でイチゴ狩りを楽しんでもらうにはどうしたらいいか-。神奈川県秦野市や伊勢原市のイチゴ農園が試行錯誤を続けている。できる限りの感染防止策を講じて営業する農家がある一方、緊急事態宣言の解除までは直売営業で推移を見守る決断も。丹精込めて育てた真っ赤なフルーツを多くの人に安全な環境で味わってほしいとの思いは同じ。事態の収束を心待ちにしながら、それぞれが今できることに全力を傾ける毎日だ。

 冬でも暖かいビニールハウス内にイチゴ独特の甘い香りが漂う。秦野市戸川の「村上いちご園」では今、「あきひめ」や「おいCベリー」などを摘み取って味わうことができる。収穫のピークとなる2月には10品種以上の食べ比べも可能になるという。

 「昨夏の猛暑を乗り越え、出来は上々。今後、さらに甘みを増すはず」。そう自信をみせる園主の村上洋さん(35)にとって、目下の懸念は新型コロナの感染拡大だ。

 今月からイチゴ狩りができるよう農園を開放したが、密集を回避するためにすべて事前予約制にした。ハウスに一度に入れる人数も例年の100人から今年は40人程度に制限している。

 ハウスの排気口からの換気も欠かさない。イチゴの生育にはハウス内を25度程度に保つ必要がある。換気により外気が取り込まれることを考慮し、ハウスの暖房の設定温度を高めにするなど、細心の注意を払っている。

 昨年はコロナ禍で春先にイチゴ狩りを中止せざるを得なくなったと明かす村上さん。「燃料代が2倍近くかかって大変だが、イチゴ狩りを楽しみにしているお客さまは少なくない。できる限りの感染防止策を講じて、楽しんでもらいたい」と話す。

 一方、緊急事態宣言の期限となる来月7日まではイチゴ狩りを休止する決断をしたのは伊勢原市小稲葉の「川島いちご園」。「お客さまに安心して楽しんでもらえる状況にない。感染すれば、すべての業務もストップしてしまう」。園を経営する川島一彦さん(58)は苦しい胸の内を明かす。「小ぶりだが、甘みは最高」と品質に太鼓判を押すだけに、その場で摘み取り、甘みを堪能してもらうことができない現状にもどかしさが募る。

 コロナ禍前は都心や横浜などからも多くの人がイチゴ狩りに訪れた。今は園での直売と県内市場への出荷などで、収束を待つ。それでも、直売で購入した人からの「イチゴ狩りの再開を楽しみにしているよ」との声が励みになっている。

 川島さんは「今は我慢のとき。イチゴ狩りを楽しむお客さまの笑顔を思いながら、やるべきことをやっていく」と前を向く。

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