女子ゴールボール・若杉遥 競技を〝楽しむ〟…失意の中で思い出した原点

若杉が金メダル獲得を誓った(ALSOK提供)

【Restart パラヒーローズ その壁を乗り越えろ(23)】2大会ぶりの金メダル獲得を目指す女子ゴールボール日本代表のキーマンとして期待されるのが若杉遥(25=ALSOK)だ。栄光と挫折を知るヒロインは、自国開催の大一番を前に並々ならぬ闘志を抱いている。

もう迷いはない。13歳のころに線維性骨異形成症で視神経が圧迫され、著しく視力が低下。小学校5年から始めたアイスホッケーを断念し、大好きだったスポーツを諦めざるを得なかった。しかし、中学3年のときに盲学校の先生からゴールボールを勧められ「アイスホッケーは好きだったし、うまくなりたいと思っていたけど、なかなか行動に表せなかった。できなくなってみて、もっとこうすればよかったとか、もっと真剣に練習すればよかったなとかって感じた。もうそういう後悔はしたくないなって思って、ゴールボールはできるところまで一生懸命やろう」と一念発起。ゴールボールの世界に飛び込むことを決意した。

すると、2年後にはロンドン大会の代表メンバーに選出され、日本史上初となる団体球技での金メダル獲得に貢献。順調なゴールボール人生のスタートを切ったが、2016年リオ大会では準々決勝で中国に敗戦。「6人選手がいた中で、私だけそこの舞台に立って、チームのために何かをするってことができなかった。何のために4年間頑張ってきたのかな」と悔しさを味わった。

失意に暮れる中、ある日、コーチから「何でゴールボールをやっているの? 好きだからじゃないの?」と言葉を掛けられ、忘れていた気持ちを思い出した。「勝ち負けも大事だけど、ゴールボールって競技を楽しもう」。“楽しむ”という原点を思い出した若杉は、気持ちを切り替え猛練習に励んだ結果、日本のエースに成長。19年アジアパシフィック選手権では宿敵・中国を下し、3連覇を達成した。だが「油断をしてしまってはリオの二の舞いになってしまうので、試合でできたこと、できなかったことはしっかり整理する必要がある」と満足していない。

「優勝というものを目指している。そして、一人でも多くの人にゴールボールっていうものを知ってほしい」。本番まで残り約7か月。リベンジを果たす準備は整いつつあるようだ。

【ゴールボール】1チーム3人で鈴の入った音の鳴るボールを相手のゴールに投げ合い、得点を競う競技。視覚障害者を対象に、全盲から弱視の選手まで出場可能。公平性を保つために、全員アイシェードと呼ばれる目隠しを着用する。

☆わかすぎ・はるか 1995年8月23日生まれ。東京出身。小5からアイスホッケーに熱中していたが、13歳のときに線維性骨異形成症で視神経が圧迫され、著しく視力が低下。盲学校に転校後、中3からゴールボールを始めると、ロンドン大会に日本代表選手団最年少の17歳でメンバー入り。日本初となる団体球技での金メダル獲得に貢献した。正確なコントロールショットと持久力が持ち味で、東京大会では攻撃の要を担う。好きな歌手はOfficial髭男dism。164センチ。

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