【マーティ&上坂すみれ 昭和・平成ソングって素敵じゃん】歌詞に交じる不思議な英語のワケ

マーティが気になるコトを上坂(右)も一緒に考えてみた

昭和生まれのアラフォー~アラ還が懐かしむ歌手や楽曲を、平成生まれのアイドルと外国生まれのミュージシャンはどう聴くのか。マーティ・フリードマンと声優・歌手として活躍する上坂すみれが、今回は歌詞に交じる英語について考察する。曲を聴きながら読んでみてください。

【歌詞に英語が入る件】

マーティ 日本の昔のヒット曲や最近のJ―POPを聴いてて、気になることがあるんですよ。歌詞に急に英語が入る曲が多いじゃん。ああいう時、聴いてる人は意味がわからなくなりませんか?

上坂 簡単な、理解できる英語であることが多いので、そんなに気にしていませんでした。わからない時は楽器の音みたいな感覚で流している感じですかね。

マーティ 僕は英語の曲にワンフレーズわからない言葉が入っていたら、すごく気になります。

上坂 確かに、マーティさんからすると、アメリカの英語曲のサビに日本語が入っているようなものですね。

――日本語が入る英米の曲、なくはないですが、非常にレアです。スティクスの「ミスター・ロボット」(1983年)やキング・クリムゾンの「待ってください」(81年)、クイーンの「手をとりあって」(76年)、カルチャー・クラブの「戦争の歌」(84年、仏語版などもあり)などは歌詞に日本語が入ってます。英米で生み出される曲の数からいえば微々たるものです

上坂 杏里さんの「悲しみがとまらない」とか、いい曲で好きなんですが、出だしやサビで♪I Can’t Stop The Loneliness と入るのは、マーティさんには不思議な感じに聞こえるんですね。

マーティ そうです。単語の組み合わせも不思議で、杏里さんで言うと、「SUMMER CANDLES」(88年)って曲があるじゃん。すごくいい曲だけど、僕は夏のキ
ャンドルって何?って思いました。だってキャンドルは一年中あるじゃん。

上坂 確かに! そういうことは考えたことなかったです。

マーティ 松田聖子さんの「Strawberry Time」(87年)もそうです。この組み合わせもアメリカ人の発想にないです。思いつきません。

上坂 そうなんですね。こういう楽曲を聴くと、どう感じるんですか?

マーティ カワイイです(笑い)。日本の歌の英語の組み合わせはカワイイのが多いですよ。日本人ならではの発想で、おいしいと思います。

上坂 そもそも、日本の歌に英語が入るようになったのはいつからなんですか?

――矢沢永吉さん、ジョニー大倉さんがいたキャロルからです。デビュー曲の「ルイジアンナ」(72年)に「Oh」やいくつかの外来語、その後のシングル「ヘイ・タクシー」「ファンキー・モンキー・ベイビー」(ともに73年)などはがっつり英語が入ってます。ここから日本語ロックの道が大きく開きました

上坂 少し前にテレビに出た時、はっぴいえんどの歴史を特集していたんです。そこに細野晴臣さんもいらして、日本のロックの歴史ではっぴいえんどがとても重要だというお話になりました。ロックに初めて日本語詞を乗せたのははっぴいえんどですよね?

――はっぴいえんどのアルバム「風街ろまん」(71年)が、日本語歌詞をロックに乗せることに成功した初めてのアルバムと言われてます。詞はほとんど後の大作詞家、松本隆さんが手がけました。実は70年ごろ、「ロックは英語で歌うべき」「日本語でいい」という、今から考えると実に不毛な論争があったんですよ。そうした中でこのアルバムが出て、さらにキャロルが登場して日本語英語チャンポン歌詞で見事にロックを歌い、商業的にも成功したことで、こんな論争は吹き飛びました

マーティ 面白いですね。外国人が聴くと日本の曲は、♪……英語 ……英語 って部分的に意味がわかるから不思議な存在感があるんですけど(笑い)、歴史があったんだね。

☆マーティ・フリードマン 米・ワシントン出身のギタリスト。1990年から2000年までメガデスに在籍。04年から拠点を日本に移し幅広いジャンルで活躍している。「紅蓮花」などをカバーしたアルバム「TOKYO JUKEBOX3」が発売中。伝説の音楽バラエティー「ROCK FUJIYAMA」がユーチューブで復活。

☆うえさか・すみれ 1991年12月19日生まれ。神奈川県出身。上智大学外国語学部ロシア語学科卒。2012年に本格的に声優デビュー。13年にアニメ「波打際のむろみさん」の主題歌「七つの海よりキミの海」で歌手デビュー。ロシア、昭和歌謡、メタルロック、戦車、ロリータ、プロレス、ひげなど多方面の知識を持つ。最新アルバムは「NEO PROPAGANDA」(キングレコード)。

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