ネコの殺処分 減らそう 佐世保市職員有志「ネコネコ団」 地道な活動、挑戦続く

処分件数と譲渡件数の推移

 佐世保市はネコの殺処分を減らす取り組みに力を入れている。2017年、市生活衛生課の前田亮平さん(42)を中心に職員有志が集まり「ネコネコ団」を結成。保健所に持ち込まれたネコを職員の自宅に連れて帰り、譲渡先が見つかるまで飼育するという地道な活動を続けている。

 市街地でもよく見かけるネコ。かわいらしい姿に、心を癒やされる人も少なくないだろう。一方、長崎県はネコの殺処分が多く、県によると16、17年度は全国最多。16年度は県内で2740匹、うち佐世保市では701匹が処分された。
 動物愛護法は、飼い主から引き取りを求められたり飼い主不明で持ち込まれたりしたネコは、原則保健所に引き取る義務があると定めている。飼い主や譲渡先が見つからない場合、1週間程度で殺処分となる。

「不幸なネコを増やさないために、むやみな餌やりはやめてほしい」と訴える前田さん=佐世保市役所

 獣医師の資格を持つ前田さんは、九十九島動植物園(森きらら)や食肉衛生検査所を経て、16年9月に生活衛生課に異動。そこで、殺処分の問題に直面した。
 原因を調べてみると、譲渡できる団体はあるものの、繁殖期には受け入れ可能な数を超えてしまうため、処分せざるを得ないケースがあることが分かった。「それなら、譲渡できるようになるまで自宅で預かっておけば、処分せずにすむのではないか」。上司に許可をもらって10匹以上を連れ帰り、引き取り手が見つかるまで飼育した。
 この取り組みに職員が賛同し、17年5月に前田さんら6人で「ネコネコ団」を結成。市から活動費の補助を受けられる「自主研究グループ」に認定された。
 はじめは離乳後の子ネコを対象に飼育を行った。夜中の給餌が必要な場合もあり「2~3時間おきに起きることもあった」。市から年間最大6万円が支給されたが、餌代や病院代などで全く足りず、自腹も切った。18年度からは人工哺育にも挑戦。離乳前の赤ちゃんにミルクを与え、親代わりとなって育てた。
 活動は広まり、自宅での預かりに協力してくれる職員や、引き取り先を探してくれる人が増えた。15年度に35匹だった譲渡は、19年度には108匹に増加。20年度は11月までに109匹を達成し、譲渡率は右肩上がりで推移している。

自宅で子ネコの世話をする職員=佐世保市内(ネコネコ団提供)

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 取材中、前田さんに「ネコが好きなんですか」と問うと、苦笑いが返ってきた。「実は苦手なんです。でも、処分を減らす方法があるのであれば、やった方がいいと思って」。家族の協力もあり、なんとか続けられているのだという。
 前田さんには切実な願いがある。それは「ネコにむやみに餌を与えて、繁殖させるのはやめてほしい」ということだ。餌をあげてかわいがっているつもりでも、繁殖しすぎると、保健所に持ち込まれて殺処分される可能性がある。「長い目で見ると、不幸なネコを増やす行為なんです」。
 ネコたちの明るい未来のために、挑戦は続く。


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