<若者の大麻汚染>支援団体「医療につなげて」 県警「知人、友人の誘い 断る勇気を」

長崎県内の大麻事件摘発者数の推移

 長崎県内在住の40代男性が初めて大麻を吸ったのは、16歳の時だった。当時、高校1年生。売人とつながっていた先輩に譲ってもらった。きっかけは詳しく覚えていないけれど、「多分好奇心からだったと思う」。
 大麻を吸うと「ご飯がおいしくなり、音楽が美しく響くようになった」と感じた。徐々に回数は増えていき、お金があれば、購入するようになった。ただ、いつからか吸っても楽しくなくなった。精神的な落ち込みもひどくなり、30代半ばごろにやめた。今は薬物依存から立ち直るためにリハビリを続けている。男性は言う。「今は吸っていないけれど、『あわよくば』という気持ちはゼロではない」
 県警組織犯罪対策課によると、2020年に大麻取締法違反事件で摘発されたのは28人。摘発者数は近年増加傾向にあり、20代以下は多い年で8割を超えている=グラフ参照=。若年層の大麻汚染が顕著に表れている。
 20年には長崎市でレゲエバーを経営する30代の男ら5人のグループを摘発。従業員や客として知り合い、同市高島町などで大麻の栽培を繰り返していた。若者たちが音楽を通してつながりを持ち「ファッション感覚」で、大麻に手を染めていることが浮き彫りとなった。17年には所持の疑いで高校生7人が摘発されている。

2020年に摘発されたグループが栽培していた大麻草(県警提供)

 摘発者数について同課は「あくまでも氷山の一角」とみる。身近な知人や友人から誘われるケースがほとんどで、「断る勇気」の大切さを自治体などと共に呼び掛けている。また、大麻を購入する金欲しさに別の犯罪に発展する可能性も懸念し「取り締まりと啓発の両輪で抑止を図るしかない」。
 アルコールや薬物依存症の支援に取り組むNPO法人ちゅーりっぷ会「長崎ダルク」の中川賀雅代表は「依存傾向にある人、好奇心が強い人、恋人の影響など動機はさまざまだろう」と指摘する。「若者は捕まって初めて罪に気付く。将来をリカバーできるよう医療につなげるなど、大人たちが責任持って手を差し伸べる必要がある」と訴える。


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