見えてきた青年指揮官の〝流儀〟とは――。巨人・阿部慎之助二軍監督(41)が今春キャンプから指導者2年目を本格スタートさせる。近未来の監督候補でもある鬼軍曹が打ち出してきたカラーは、恩師である原辰徳監督(62)とも一線を画すもの。実は新型コロナ禍前から首脳陣と選手たちのコミュニケーションの場でもある「選手メシ」を封印し、独自路線を歩んでいる。
球春到来を告げる春季キャンプは1週間後に始まる。宮崎で24日間にわたって若手を鍛え上げる阿部二軍監督は「メリハリのあるキャンプにしたい」と早くもやる気十分だ。
2019年に電撃引退し、昨季から二軍監督に就任。余力を残しての引退とあって打撃の実演など精力的な指導を行ってきた。2年目の本格始動も目前だが、昨季の〝ルーキーイヤー〟はグラウンド外でも異彩を放っていた。
独自の指導者像を象徴する一つが、キャンプの練習後や遠征先での「選手メシ」との向き合い方だろう。新型コロナ禍前までは、腹を割って話し合いながら選手の性格や考えを把握したり、球界内では親睦を深めるための当然のコミュニケーションツールだった。
巨人でも、原監督は選手と距離を取るべきかどうかについて「距離っていうのは置く必要はないと思っている。監督は平等にやってあげた方がいい。(誘う場合は)コソコソやったら絶対ダメだな」と門戸を全面開放。18年に初入閣した元木大介ヘッドコーチ(当時は内野守備兼打撃コーチ)も、翌19年の春季キャンプの1か月で一軍メンバーのほぼ全員を酒席に連れ出して親睦を深めた。
もちろん一軍と二軍では選手の立場は異なる。そんな二軍にあっても今季から一軍に昇格した村田修一野手総合コーチは、元木ヘッドと同様に宴席で何度も若手の話に耳を傾けてきた。
その点で、阿部二軍監督のスタイルは独特だった。新型コロナ禍前の昨春キャンプから宿舎を出ることなく、意外な理由で「選手メシ」そのものを取りやめていた。
「ご飯を食べながら選手の様子をうかがう。これは徹していましたね。遠征とかでも、一回も(外に)出なかった。食育とかもあったので、そういうのを見たりね。これで足りているのか? とかそういうのも見てあげないと」(阿部二軍監督)
二軍では専門の栄養士も入り、選手が食べる量やバランスにも注意を払ってきた。決められた量を誰がどれだけ食べたのか、はたまた食べ残しはないか…。当時は外食しようと思えば可能だったが、グラウンドを離れてもあえて監督業に徹し、選手食堂で〝監視活動〟を続けていたわけだ。
今春キャンプは感染対策の強化で昨春の行動制限とは比較にならない。宿舎では缶詰め状態となるが、阿部二軍監督はある意味で時代を先取りしていた格好。この先、どんな名指導者に進化していくのか目が離せない。