中山競馬場で行われたGⅡアメリカジョッキークラブカップ(芝外2200メートル)は、ルメール騎乗のアリストテレス(牡4・音無)が1番人気に応えて優勝。年明け初戦で重賞初制覇を成し遂げ、トップクラスの引退が相次いだ芝の中長距離路線の主役へ名乗りを上げた。
「この馬場で直線はすごい長いです」
中山芝コースの最後の直線距離は310メートル。実際はアリストテレスがこれまで走った5つの競馬場、6つのコース(京都内回り328メートル~新潟外回り659メートル)のどれよりも短いのだが…。3週連続で重賞Vを決めた名手ルメールの〝体感〟さえ狂わせた不良馬場が勝敗を分ける最大のカギとなった。
2分17秒9の決着は距離が2200メートルとなった85年以降で最も遅い記録。レース上がりを37秒9も要したことから、求められた資質は〝切れ味〟ではなく〝持久力〟だった。
「全馬にとって馬場コンディションは難しかった。重い馬場向きの血統かどうかが大事でした」とルメールも馬場適性を勝因に挙げる。父エピファネイアは不良馬場だった13年菊花賞の勝ち馬。近親にステイヤーが多数いる事実からも、他の16頭よりスタミナを要する馬場を苦にしなかったことは確かだろう。
3コーナーからポジションを上げる際の手応えは決して良くは映らなかったが「この馬場ですからスピードに乗るまで時間がかかりました。それでも4コーナーでは勝つ自信がありました」と鞍上は不安を抱くことなく直線へ。同じ4歳世代トップクラスの一角であるヴェルトライゼンデが外から迫ったが、余力十分に半馬身差の先頭ゴールイン。先週までは4歳馬が期待を裏切るシーンが多く見られたが、〝2番手グループ〟とは格が違うことを誇示する重賞初制覇だった。
その一方で勝利に浮かれることなく、勝ってかぶとの緒を締めたのが音無調教師。昨暮れの有馬記念パスは、菊花賞(2着)の疲れを取ることを最優先したローテーション。いったん馬体を緩めたこともあり「中山への輸送で数字(478キロ)的には太くなかったが、栗東では490キロ以上あったからね。1週前の動きも重かったし、正直、自信はなかったんだ」と半信半疑の4歳始動戦だったことを明かす。
今後については「春の目標は二千の大阪杯ではなく天皇賞・春(5月2日=阪神芝外→内3200メートル)。この馬はステイヤーだと見ているし、余裕残しの仕上げで勝てたのはこの馬場でスタミナがものをいったから。本番まで時間があるし、次は良馬場のレースでも結果を出して天皇賞に向かいたい」と同師。
候補に挙がっているのはGⅡ阪神大賞典(3月21日=阪神芝内3000メートル)、GⅡ日経賞(3月27日=中山芝内2500メートル)。
ここで決め手兼備も証明できれば、不動の主役として頂上決戦に駒を進めることだろう。