マリナーズがいよいよ低迷期脱出か PS進出は2001年が最後

アメリカの4大スポーツで最も長くポストシーズンから遠ざかっているのはマリナーズである。イチローが加入した2001年、史上最多の116勝を挙げて地区優勝したのが最後。それから19年連続でポストシーズン進出を逃している。しかし、そのマリナーズは今、「黄金期を迎える直前」と言われている。同地区の他球団の弱体化に加え、若手有望株を多く抱えていること、大型補強を敢行するだけの資金を準備できていることなどが主な理由だ。

マリナーズのファーム組織は「MLB Pipeline」による最新のランキングでメジャー4位の評価を受けている。最新のプロスペクト・ランキングTOP100にはジャレッド・ケレニック(9位)、フリオ・ロドリゲス(15位)、エマーソン・ハンコック(30位)、ローガン・ギルバート(35位)、テイラー・トラメル(51位)、ジョージ・カービー(95位)と6人がランクイン。

ジェリー・ディポートGMはケレニック、ギルバート、トラメルに球団別プロスペクト・ランキングで8位のカル・ローリーを加えた4人が「今季メジャーでチームの戦力になる可能性がある」と話しており、「彼らは非常に才能豊かな選手たちだ。出場機会を与えられれば躍動するだろう」と大きな期待を寄せている。

また、マリナーズの現時点での年俸総額は8000万ドルに満たず、必要であれば大物選手を獲得することも可能。来季に至っては、契約が確定している選手がマルコ・ゴンザレス(年俸575万ドル)、エバン・ホワイト(同140万ドル)、クリス・フレクセン(同305万ドル)、菊池雄星(1650万ドルの球団オプションが破棄された場合に1300万ドルの選手オプションを行使できる)の4人しかおらず、有望株の台頭とともに大型補強に打って出ることが可能な状態となっている。

メジャーリーグ公式サイトのマイク・ペトリエロは、現在のマリナーズように「豊富な若手有望株」と「資金的な柔軟性」を両立したチームとして数年前のブレーブスを挙げている。2015年から3年連続で90敗以上を喫したブレーブスは見事にチーム再建を成功させ、2018年から地区3連覇を達成。マリナーズも同様のルートを辿る可能性があるというわけだ。

同地区に圧倒的な戦力を誇る強豪チームがいないこともマリナーズにとって追い風だ。黄金期を築いたアストロズはジョージ・スプリンガーが退団するなど転換期を迎えており、アスレチックスもリアム・ヘンドリックスなどを失って弱体化。エンゼルスは野手偏重のいびつな戦力構成が続いており、レンジャーズはチーム再建の真っ只中にある。若手有望株の成長次第では、早ければ今季にもマリナーズが地区を制すると予想する関係者すらいるほどだ。

もちろん、若手有望株がことごとく大成せず、大型補強でも数々の失敗を重ねてきたマリナーズの負の歴史を忘れるわけにはいかない。しかし、現在のマリナーズには長いトンネルを抜け出せると確信できるくらいに明るい材料が揃っている。「豊富な若手有望株」と「資金的な柔軟性」を兼ね備えるマリナーズがアメリカン・リーグ西部地区の主役に躍り出る日は、それほど遠くないだろう。

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