串間養殖ブリ輸出6割増へ 大型いけす導入環境配慮 市漁協、黒瀬水産 

 串間市漁協(鬼塚荘次組合長)と黒瀬水産(同市、泉田昌広社長)が、養殖ブリの輸出拡大に乗り出している。外国人の「訪日時に食べた味が忘れられない」という帰国後の需要が高まっているためで、東アジアや欧州に向け6割増となる年間800トンを輸出する計画。円形大型いけすの導入などで生産性向上と労力削減も実現し、SDGs(持続可能な開発目標)にも配慮した取り組みとなる。

 ブリ人気の背景には、インバウンド(訪日外国人客)需要がある。同漁協と同社などによると、過去最多の3千万人超が訪れた2018年以降、帰国後に日本産の高品質な刺し身やすしを求める海外需要が増大。日本近海の固有種であるブリは希少性が高く、脂も乗りやすいため人気の魚種となっているという。

 輸出拡大への一手となるのが、国内でも珍しい円形大型いけす9基の設置。直径30メートル、高さ20メートルで5万5千匹の収容が可能だ。容積は従来の角形いけす(縦、横10メートル、高さ8メートル)の18倍、収容量は10倍に。給餌や死んだ魚の回収作業なども大幅に効率化できる。同じ面積の海域に従来型を並べるより、生産量1・5倍、労力16%削減、燃油費は25%減、年間の償却前利益8500万円増が見込めるという。

 いけすの素材も金属からポリエステルなど長期使用できるものに変更。専用の網洗浄ロボットや、餌を大量積載できる給餌船なども導入する。

 約千トンのマーケットがある東アジアでは、冷凍の安価な天然魚が出回っているため、高級レストラン向けの生鮮品を空輸することで差別化。加工場を2ライン化することで処理スピードを上げて鮮度を高め、243トンの増産を図る。

 約250トンの市場がある欧州向けは冷凍品を船便で輸送。身の変色が少ないマイナス35度で管理できる冷蔵庫を増設し、輸送コンテナを大型化することで輸送費を抑える。増産規模は67トンを見込む。

 国の「もうかる漁業創設支援事業」を活用し、事業期間は20年度から6年間。既に新型いけす5基を設置し、今月上旬に約5万匹を導入した。漁場環境の維持や業務安全性の確保、後継者育成、労働環境改善などSDGsへの貢献も意識。自然環境へ配慮して育てたことを示すASC認証などの国際規格を取得していることもアピールする。

 黒瀬水産生産推進部は「地域貢献につながる生産拡大には、(市場の必要に応じた製品を無理なく販売する)マーケット・イン型の輸出強化が欠かせない。事業を成功に導くことで持続可能な養殖業の構築に貢献したい」と話している。

© 株式会社宮崎日日新聞社