有名記者が防御率4点台の救援右腕に殿堂入りの1票を投じた理由とは

アメリカ野球殿堂入りの投票結果発表が日本時間1月27日に行われる。すでに自身の投票内容を公開している記者も多くおり、「USAトゥデイ」のボブ・ナイチンゲールはバリー・ボンズ、ロジャー・クレメンス、ラトロイ・ホーキンス、トリー・ハンター、ジェフ・ケント、カート・シリング、ゲーリー・シェフィールド、サミー・ソーサ、オマー・ビスケル、ビリー・ワグナーの10人に投票したことを明らかにした。なぜナイチンゲールは通算防御率4.31のホーキンスに1票を投じたのだろうか。

現時点で182人分の投票内容が明らかになっているが、メジャー21年間で通算1042試合に登板して75勝94敗127セーブ、184ホールド、防御率4.31をマークしたホーキンスに投じられた票は1票だけ。ナイチンゲール以外にホーキンスに票を投じた記者は1人もいない。

ナイチンゲールによると、ホーキンスが殿堂入り投票の対象になったとき、ホーキンスに投票することは決めていたという。その経緯を説明するために、ナイチンゲールは時計の針を28年前、1993年の殿堂入り投票に戻した。

この年の殿堂入り投票で1票も獲得できなかった選手は5人いたが、そのなかに通算2091安打のハル・マクレーが含まれていた。ロイヤルズの番記者を務めていた若き日のナイチンゲールは、野球というゲームに情熱を注ぎ、リーダーとしてチームを牽引するマクレーの姿に感銘を受け、マクレーをリスペクトしていた。

ところが、そのマクレーは殿堂入り投票で1票も獲得できなかったのだ。当時のナイチンゲールは記者年数が足りず、投票権を持っていなかった。そのとき「自分自身にとって大きな意味を持ち、なおかつチームメイトや監督・コーチにリスペクトされている選手がいたら、成績がどうであれ投票する」と決心したという。

ホーキンスは11球団で21年間にわたってプレーし、歴代10位となる1042試合に登板。これは黒人投手としては歴代最多である。また、カンザスシティを訪れた際にチームメイトをニグロリーグ博物館へ連れていくなど、リーダーとしてチームメイトからリスペクトされる存在でもあった。ナイチンゲールは「ホーキンスの功績を称え、彼が最低でも1票は獲得できるようにしたい」と考えていたのだ。

ナイチンゲールは今回の殿堂入り投票で、殿堂入りに相応しい選手としてまず8人を選んだという。残りの2枠のうち1枠はホーキンスへ、もう1枠はホーキンスと同様の理由で、黒人選手のリーダーとして球界を牽引したハンターへ与えられた。

ナイチンゲールは「自分の投票について謝罪するつもりは全くない」と断言する。殿堂入り投票は「選手の成績、能力、誠実さ、スポーツマンシップ、性格、チームへの貢献度に基づいて行われる」と定められているが、少なくともナイチンゲールにとって、ホーキンスは殿堂入りの1票を投じるに値する素晴らしい選手だったということなのだろう。

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