現金を貯めておくことが資産形成?どんな「資産」を積み上げていけば良いのか

「人生100年時代。資産形成は大切です」と言われますが、問題はどのような「資産」を積み上げていけば良いのかということです。なかには現金を貯めておくことが資産形成と思っている人もいるでしょう。それは正しいのでしょうか。ちょっと考えてみたいと思います。


「資産形成=現金を貯めること」は正しい?

自分自身の老後を考えて、資産形成を始めなければと思っている人は結構いると思います。

公的年金の財政が破綻することはありませんが、将来推計人口によれば、2042年にかけて65歳以上の高齢者人口が増える一方、64歳以下の現役世代人口は減少傾向をたどっていきます。高齢者1人を支える現役世代の人口が減ることによって、現役世代の社会保障負担が重くなるのはもちろんのこと、高齢者が受け取れる年金の額が減額されることも十分に考えられます。

当然、公的年金だけで豊かな老後など送れるはずがありません。もし、経済的に豊かな老後を希望するならば、定年になる前に出来るだけ資産を増やしておく必要があります。だから資産形成が必要だということになるわけですが、「資産形成=現金を貯めること」だと考えているとしたら、それはちょっとした間違いかも知れません。

お金を作るためには3つの方法があります。それは「節約する」、「働く」、「運用する」です。

ただ、節約するのも働くのも大事ですが、両方とも得られる経済的なメリットには限界があります。節約によって貯まるお金は、自分が毎月得ている収入以上の金額にはなりませんし、ダブルワークで働くにしても、コンビニの店員やウーバーイーツの配達員などでは稼げる額に限界があります。普通の会社員が、自分の時間や体力を費消することなくお金を作るためには、運用による資産形成しかありません。

ところが、いざ資産形成をしようと思い立ったとしても、何で資産形成すれば良いのか分からず、多くの人は預貯金にお金を貯めたり、タンス預金に勤しんだりしますが、この時点ですでに「資産形成」の考え方が間違っています。

「資産」の意味を考えてみよう

言っていることの意味が分からない人は一度、辞書でもネット検索でも良いので、「資産」という言葉の意味を調べてみてください。資産とは、「会計用語で将来的に企業に収益をもたらすことが期待される経済的な価値」などと書かれているはずです。

企業がどうやって事業を行うのかを会計的に説明すると、まず自分たち、あるいは企業の設立趣旨に賛同してくれた人たちから出資を募って集めた自己資本に加え、銀行など金融機関から融資を受けた他人資本(負債)を元手にして、事業を展開するうえで必要な事務所、工場、製造業なら機械、サービス業ならそのサービスを展開するうえで必要な道具を購入して事業を行います。この、事業を展開するうえで必要な各種機器や道具が資産になります。企業が収益を得るうえで必要な経済的な価値というわけです。

つまり資産とは将来、何かしら収益を生み出すものでなければなりません。これは企業だけでなく、個人の資産形成にも当てはまります。

企業のバランスシートを見ると、現金や預金も資産勘定に入っているので、その意味では両者とも「資産」の一種ですし、急な支払いが生じた時に備えて、ある程度の現預金を持つ必要はあります。

しかし、100万円の現金をずっとタンスの奥に仕舞いこんでおいたとしても、100万円の現金は10年後も、20年後も100万円のままです。1円たりとも増えることはありません。つまり、タンス預金は将来的に何の収益ももたらしてはくれません。

では、預貯金はどうでしょうか。預貯金もバランスシート上は資産勘定に含まれていますし、定期的に「利息」という形でインカム収入を得ることができます。

とはいえ、現在の金利水準で得られる利息は微々たるものです。預入金額、預入期間に関係なく、現在の定期預金の利率は年0.002%。1,000万円を10年間預けたとしても、利息はたったの2,000円です。

日銀が作成している資金循環統計によると、2020年9月末の個人金融資産は1,901兆円となり、はじめて1,900兆円を超えました。このうち現預金が1,034兆円もあり、全体の54.4%を占めています。個人の家計を企業のバランスシートに見立てて考えると、多くの資産が将来、何の収益も生まないところに放置されているのです。

株価の下落が嬉しくなる投資法

資産形成で大事なのは、継続的にキャッシュフローを生み出してくれる資産を積み上げていくことです。

たとえばJ-REIT。現在、東証には62銘柄のJ-REITが上場されていますが、その平均分配金利回りは4%以上あります。定年を迎えた時点で、J-REITの投資額が4,000万円になっていたら、4%の分配金利回りで年160万円ものキャッシュフローを得ることができます。あるいは株式でも、配当利回りが4%を超える銘柄は結構あります。東証1部上場企業で見ると、1月19日現在、163銘柄の配当利回りが4%以上です。

このように利回り狙いで長期保有するという投資をすれば、株価が急落した時はむしろ「ラッキー」と思えるでしょう。なぜなら株価が急落すれば、逆に利回りが上昇するからです。

ちなみにリーマンショック後にJ-REITの価格が急落した時の分配金利回りは、8%超まで上昇しました。株式でもJ-REITでも、経営がしっかりしていて倒産リスクが低く、安定的に高い配当や分配を継続できるものに投資していれば、このように利回りを狙った投資が可能になります。

安定したキャッシュフローを生み続けてくれる資産をどこまで積み上げていけるかが、資産形成の要諦なのです。

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