【根岸S】去勢して〝強い女〟になったヘリオス 陣営は「冬場は走る」

霜月S快勝!ダート戦線で完全開花間近のヘリオス

【根岸S(31日=東京ダート1400メートル、1着馬に2・21フェブラリーS優先出走権)栗東トレセン発秘話】学生のころ、大阪の某スポーツ新聞社でアルバイトをしていた。京都から通っていたこともあって、降版(締め切り時刻)が遅くなると終電に間に合わず、堂山町の飲み屋で始発を待つことが多かった。新宿2丁目ほど知られてはいないが、堂山町にも〝そういったお店〟が数多く存在。当方も先輩によく連れて行ってもらったものだ。

その堂山町で自分のモノは残しつつも女性になりたい男性に出会った。ホルモン注射を打ち始めると、みるみるうちに髪に艶が出て、体形やしぐさが女性らしくなっていったのをよく覚えている。この業界に身を置くようになって、騙馬の取材をするたびに、その男性をふと思い出してしまう。

「去勢してホルモンバランスが崩れたからなのか、夏場でも汗をかかず、冬毛が伸びたりしたんですよね」

管理する寺島調教師から、そんな〝衝撃発言〟が飛び出した。GⅢ根岸S(31日=東京ダート1400メートル、1着馬に2・21フェブラリーS優先出走権)にエントリーしているヘリオスに関しての話だ。略歴を記すとデビューは友道厩舎で、2戦目に勝ち上がったものの、その後は成績が上がらず…。3歳6月のダート戦(8着)を最後に、去勢&転厩して再起を図ることに。

寺島調教師の発言通り、転厩初戦こそ肉体面の変化に馬自身が戸惑ったのか11着に敗れたが、その後は快進撃を続け、わずか5戦でオープンまで上り詰めてみせた。

「筋肉が柔らかくて、とにかく走るフォームがきれいなんだ。まあ、転厩馬なので(去勢)前と比較はできないんだけど…」とは担当の中嶋助手だが、以前の戦績と比較すれば、去勢効果があったのは明らかだろう。

オープン初戦の室町Sは7着に敗れたが、これには明確な敗因がある。

「だいぶ涼しくなった9月半ばにトレセンに入厩させたんだけど、それでも暑さがこたえていた感じでした。とにかく汗をかかない馬なので、とくに夏場は調整が難しいんですよ」

明らかに本調子になかった室町Sから一変。オープン2戦目の霜月Sでは9番人気の低評価ながら、好位から余裕の抜け出しを決めてみせた。ハンデ(54キロ)の恩恵があったにしても、良馬場で1分22秒8の走破時計はなかなかのものだ。

「鞍上(北村宏)も〝まだ先がありそう〟と言ってくれた。やっぱり冬専用馬だと思うし、レースぶりを見ていると、マイルまではこなしてくれそうですね」

寺島調教師は前走の快勝劇でフェブラリーS(2月21日=東京ダ1600メートル)をも視野に入れている。もちろん、現時点ではフェブラリーSへの出走は難しいだけに、最低でも賞金を加算しておきたいところだろう。

「牝馬の時代」にあやかるわけではないが…。去勢してより強い女へと近づいた?ヘリオスの走りに注目せずにはいられない。

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