【薬剤師養成検討会】製薬業界からの6年制評価は不評

【2021.01.27配信】厚生労働省は1月27日、「第6回薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」を開催し、製薬企業における薬剤師の業務について議論した。製薬業界からは7社のヒアリング調査が報告された。調査対象が7社と、一部の企業の調査であり、業界としての意見ではないことが前提とはなるが、調査では「学力向上」や「研究者の基礎的技能」などで評価は低かった。

データサイエンス分野での活躍を期待

製薬産業から、第一三共株式会社 執行役員(渉外管掌)の平野 秀之氏が報告した。

また、「特に、研究者又は技術者に関してお伺いします。薬学教育において学生が研究に費やす時間や研究に関する基礎的技能の習得が不十分になっていると感じていますか」との問いに対して、7社中、「大いにそうである」が2社、「そうである」 2社、「どちらでもない」3社、「そうではない」0社という結果だった。基礎的技能の習得については不十分になったとの意見が多かった。

製薬企業において薬剤師が必須のポジションは、必要な業許可に付随して管理者の設置が必要となり、具体的には「総括製造販売責任者」(本社に1名)、「製造管理者」(各工場、製造所に1名)、「管理薬剤師」(各物流センターや支店・営業所に1名)などとなっている。

こうした中、6年制導入によって製薬企業の薬剤師の採用状況には大きな変化はなく、おおむね満たされている状況という。

ヒアリングでも、「6年制移行後、貴社で必要とする薬学部卒生/薬剤師を採用できていますか」との質問に対し、「以前と変わりなくできている」が4社、 「どちらでもない」が 2社、「できていない」が1社だった。

一方、ヘルスケア産業でもDXが進展しており、データサイエンスの分野などで、薬剤師の活躍が期待されているところという。

こうした報告に対し、東京大学医学部附属病院教授・薬剤部長の鈴木 洋史氏は、「多い人を減らすのではなく、多い人をどう活用していくのか考えた方がよい。健診データやカルテデータがデジタル化されていくが、患者の背景も知っている地域の薬局が、付加価値が高く、かつ医療関係者が活用しやすいきれいなデータベースをつくることに貢献することができるのではないか」と期待を寄せた。

公益社団法人日本精神科病院協会副会長の野木 渡氏は、「MRなど、製薬企業の中で薬剤師の比率はどのくらいあるのか」と質問した。

これに対し平野氏は、「多様性を求めていっていることもあり、薬剤師の比率というのを出していないのではないかと思う。企業により差も大きいと思う。ただ、一定の割合で薬剤師の方の採用をしていると思う」と回答した。

こうした議論を受け、公益社団法人日本医師会常任理事の宮川 政昭氏は、「必ずしも薬剤師であることが必要とされない分野も出てくるため、応用が活用される道となる。さまざまな分野の人が大学の非常勤講師として連携するようなダイナミックな仕組みが必要なのではないか」と提案した。

厚労省「卒前・卒後の一体的な議論に」

また、この日は、「その他の議論」として、「国家試験」について議論され、厚労省が国家試験と共用試験、実習の位置づけなどを説明。それぞれの基本方針には、定期的な見直しの必要性が明記されているといい、「今後、卒前卒後を一体した実務実習の議論を行う際には意識していく必要がある」(厚労省)とした。

かねてからテーマに挙がっていた「スチューデント医師」にならった「スチューデント薬剤師」(卒前に一定の資格を持って実践的な実習を行う)の議論の布石とも受け止められる。

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