「最も強力」で「最もハイリスク」なヤンキースのローテーション

現時点で「最強のローテーション」を擁しているのはどのチームだろうか。「FanGraphs」が各球団のデプスチャートをもとに算出している予想WARによると、クレイトン・カーショウら充実の顔ぶれを誇るドジャース(4位:14.5)、ダルビッシュ有らを獲得したパドレス(3位:16.6)、絶対的エースのジェイコブ・デグロムを擁するメッツ(2位:16.7)を抑えてヤンキースが1位(18.3)となっている。しかし、ヤンキースのローテーションは「最もハイリスク」とも言われている。

今オフのヤンキースはローテーションから田中将大、ジェームス・パクストン、J・A・ハップの3人が抜け、FAでコリー・クルーバー、トレードでジェイムソン・タイオンを獲得。昨季を全休したルイス・セベリーノとドミンゴ・ヘルマンを含め、先発の頭数は揃った。

予想WARを見ると、エースのゲリット・コールが5.6で圧倒的。以下、クルーバーが2.9、セベリーノが2.3、ジョーダン・モンゴメリーが2.2、タイオンが2.1、デイビー・ガルシアが1.4、ヘルマンが1.2で続き、クラーク・シュミットが0.3、ヨーリス・チャシーンが0.2、マイケル・キングが0.1と予想され、合計18.3となっている。

しかし、1年間ローテーションの一角として確実な働きを計算できるのはコールただ1人という状況である。クルーバーはサイ・ヤング賞2度の実績を誇るものの、過去2年は故障が続いており、昨季は1イニングしか投げていない。今年4月で35歳という年齢も不安材料だ。セベリーノはトミー・ジョン手術明けで、そもそもシーズン中盤ごろまで復帰できない。

モンゴメリーはメジャーデビューした2017年に155.1イニングを投げて9勝7敗、防御率3.88をマークしたが、それ以降は昨季の44イニング(防御率5.11)が最多。1年間を通しての働きは未知数だ。タイオンは2019年8月に自身2度目のトミー・ジョン手術を受け、昨季全休。2018年に191イニングを投げて14勝10敗、防御率3.20の好成績を残しているが、今季はあくまでも試運転のシーズンに過ぎない。

ガルシアとシュミットは昨季デビューしたばかりの新人投手であり、ヘルマンは2019年に18勝を挙げているとはいえ防御率4点台(4.03)。しかもDV疑惑で出場停止処分を受けたため、2019年9月を最後にメジャーのマウンドに立っていない。要するに「1年間ローテーションの一員として投げる」という最低限の働きができるかわからないハイリスクな投手ばかりなのだ。

予想WARの上位7人のうち、クルーバー、セベリーノ、タイオン、ヘルマンは昨季4人合計で1イニングしか投げていない。もちろん、彼らが揃って実力を発揮すればメジャー有数の強力ローテーションが完成するが、コール以外の先発投手が全滅する可能性もある。ヤンキースは「最も強力」かつ「最もハイリスク」なローテーションで勝利を積み重ねることができるのだろうか。

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