田中〝楽天サプライズ復帰〟の裏に石井一久GM兼監督の存在

楽天復帰が決まった田中

レジェンドが東北凱旋を果たす。楽天は28日、ヤンキースからFAとなっていた田中将大投手(32)と入団で基本合意したと発表した。背番号は「18」に決まり、8年ぶりの古巣復帰で2013年以来となるチームの日本一奪回へ心血を注ぐ。新型コロナウイルスの感染拡大によってMLBの移籍市場は動きが鈍く、右腕は愛着のある杜の都への帰還を決断。サプライズ復帰の裏側では、キーパーソンとして石井一久GM兼監督(47)の存在もかなり大きく働いたようだ。

楽天がこれ以上ない〝超巨大補強〟を完成させた。プロ入りから7年間に渡って在籍した田中は、国内ラストイヤーの13年に開幕から24連勝のNPB記録を成し遂げるなどチーム初の日本一にも大きく貢献したレジェンド。名門・ヤンキース移籍後も右腕は6年連続2桁勝利を飾って先発ローテの軸となり、今オフにFAとなったものの、移籍市場低迷のあおりを受けて所属先が決まらない状況が続いていた。加えてヤンキースはぜいたく税を回避する意向から選手総年俸を抑える編成を強いられ、田中のチーム残留は事実上〝消滅〟。田中側はメジャー他球団への移籍を模索するも足踏みが続いていた。

ここで一気にスパートをかけたのが、古巣・楽天だ。昨年10月に本紙が第一報を報じた後、年明けから石井GM兼監督が田中に〝公開ラブコール〟を送り、水面下で交渉を重ねてレジェンド復帰へ本格的な受け入れ態勢を整えてきた。前日27日には石井GM兼監督自らが田中の復帰に向けて本人と交渉中であることを明言。正式な条件提示には至っていないとした上で「どういう選択をするか分からないが、どういう形を選択肢にしてもいいようにコミュニケーションを取っている」とも述べていた。

こうした中、楽天側に復帰を決断した田中から吉報が舞い込んだ。球団周辺では粘り強く地道な話し合いを継続させ、最終的に実らせた石井GM兼監督の交渉術を評価する声は多い。田中復帰に関して「今回は石井さんが間違いなく〝陰のMVP〟」と称賛する球団関係者もいる。

そしてMLB関係者や球団内からは古巣へ復帰を果たす田中にとって、この石井GM兼監督の存在こそが実は大きなプラス材料になるとの見解も出ている。田中にとってもメリットとされるのは、石井GM兼監督が現役時代に培ったMLBでの経験値だ。ヤクルトを経て02年から3シーズン在籍したドジャースで通算36勝をマーク。輝かしい成績を残し、03年にメッツでプレーした後、古巣ヤクルトで国内復帰を果たしている。

ア・リーグの極東スカウトは「実を言うと石井さんには田中が経験していない〝強み〟がある」と打ち明け、こう続けた。

「石井さんは(国内復帰後)最初の5年間で通算49勝も挙げるなどメジャーから国内へ復帰を果たした〝大成功者〟でもある。NPBへのUターンの場合でも投手が苦慮する『アジャスト(適応)』について石井さんはそれなりに分かっているはずで、田中も当然聞きたいところだろう。そして何よりも石井さんは複数のメジャー球団でプレーした経験も持っている。田中が今オフ、ヤンキース以外の球団も選択肢に入れてメジャー復帰をもくろむなら、きっと手助けになってくれるはずだ」

球団内でも同様に「田中に関しては石井GM兼監督がキーパーソン」と目されている。ともにメジャーで活躍した田中、そして石井GM兼監督の〝合体〟の行方も今から非常に楽しみだ。

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