ザイリンクスの新カントリーマネージャが語った現在のFPGAの立ち位置

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Xilinxの日本法人であるザイリンクスは1月28日、オンラインで記者説明会を開催。2020年8月にカントリーマネージャに就任した林田裕氏により、同社のビジネス概況などが説明された。

Xilinx内部におけるザイリンクスの立ち位置に変化か?

実は2020年3月、これまでザイリンクスを率いていたSam Rogan氏が退職した。この結果、ザイリンクスの代表取締役はSumeet Gagneja氏が(現在も)務めているのだが、Gagneja氏はXilinx本社のCorporate VP兼Finance and Chief Accounting Officerという職にあり、取締役に名を連ねるCatia Hagopian氏(SVP&General; Counsel)およびAndy Wong氏(Global VP, Accounting)もそれぞれの職種からお判りの通り本社で忙しく仕事をされている方々である。要するにXilinxの海外子会社の取締役として名前を連ねているだけの話であって、実際の子会社の運営まで手を出している訳ではない。

この結果、ザイリンクスは長らくトップ不在(といっても海外子会社であるから、本社からのコントロールを直接受けている)の状態でしばらく運営されていたわけだが、2020年8月に林田氏がカントリーマネージャとして就任した。ザイリンクスの社長ではないところがポイントで、林田氏の仕事がRogan氏までの歴代の社長と違うところがあるか? と言われれば恐らくは変わらないのだが、ザイリンクスの扱いがこれまでと変わったという事ではないかと思う。もっともこのあたり、もしAMDによる買収が成立した場合にはまた変わってくることになるかと思われる。

余談であるが、林田氏の前職はその日本AMDの社長である。こちらはDavid Bennett氏が2018年5月にLenovo Japan代表取締役社長に就任した事を受けての事だが、その時にはエンタープライズ・ソリューション営業本部 アジアパシフィック・日本担当本部長という肩書で、組み込み分野を担当していた。

それ以前であるとBroadcomやNetLogic、Vitesseなどを経験しており、それ以前はTEL(東京エレクトロン)でXilinx製品の販売を担当していた(1994年~1999年)とあるので、丁度電子部品の販売がTELからTED(東京エレクトロンデバイス)に切り替わる端境期に在籍されていたようだ。

適用範囲の拡大が進むFPGA

林田氏の話はこの程度にして、本題に入りたい。就任こそ昨年だったものの、公式には今回が林田氏のお披露目という話であり、逆に言えばビジネス概況そのものに関して言えば特に目立った話は無かった。

まずAIに関して言えば同社は推論向けを中心にソリューションを展開している訳だが、同社のソリューションを使う事でCPUだけで実行した場合の10倍の性能を実現できる(Photo02)とし、サーバー向けではAlveoのラインナップが拡充されている事(Photo03)に加え、VARパートナーも増えている事(Photo04)を強調した。通信向けは特に5Gに向けた割合が大分大きくなっている様だ(Photo05)。

車載向けでは、事は華々しく発表されたが、これに留まらず2020年度にはほぼ2000万個の製品を出荷しており(Photo06)、今後はさらに深く自動車向けに入ってゆくというロードマップも示された(Photo07)。

もちろん他にもIndustrial/Vision/Healthcare/Scientific/Defence&Aerospace;/Visual(業務用オーディオ/ビデオや放送機器)/民生機器などに引き続きAddressしてゆく、として林田氏の説明は終わった。

続いてOKIアイディエス(OIDS)、およびACRiからの説明がそれぞれ行われた。OIDSは日本には2社しか存在しない、XilinxのPremier Alliance Program Memberの1社(もう1社は富士通九州ネットワークテクノロジーズ)であり、現在は年間150以上の開発に携わっている(Photo08)とし、実際の開発事例を紹介した(Photo09~11)。

次がACRiについて。正式名称は「アダプティブコンピューティング研究推進体」であるが、複数の大学と民間企業によるFPGA普及のための団体である(Photo12)。

物理的には東京工業大学内にトータルで105枚のFPGAボードを設置、これをリモートから自由に使える環境を提供する(Photo13)事で、FPGA利用の啓蒙を図るほか、技術的な知識の共有やサポートなど、いわばFPGAエンジニアを育ててゆくための母体となる事を目指した活動である。

XilinxもACRiの創設企業の1社として名を連ねており、活動資金やハードウェアの供出だけでなく技術的支援を含めた形での協力をおこなっている(Photo14)。

こうしたパートナーや産学協同の取り組みについても同時に説明が行われる、というあたりが現在のXilinxの日本における立ち位置を明確に示している格好だ。

「順調に行けば2021年末に買収が成立する」という、「後」に同社がどういう方向性を向くのかは当然ながらまだ明らかにはなっていないが、その買収後の立ち位置に関してのXilinxからの一種のプロポーザル、とも言えなくない内容であった。