【シルクロードS】リバティハイツ高野調教師「もっと早く千二を使うべきだった」

内に闘志を秘めながら歩を進めるリバティハイツ

【シルクロードS・栗東トレセン発秘話】昨年の菊花賞で無敗のクラシック3冠を見事に達成したコントレイル。その当時の連載コラムでディープインパクトの調教を担当していた池江敏行助手を取材した際に、興味深い話が聞けた。

「(武)ユタカは〝ディープインパクトは気性的に1200メートルでもいい競馬ができる〟と言っていたんだよ」

気性が前向き過ぎるがゆえに、ゆくゆくは〝スプリンター〟になる可能性を鞍上が指摘していたのだ。産駒のグランアレグリアが昨年のスプリンターズSを圧勝したのもディープインパクトの潜在的な短距離適性が高かった証明と言えるのかもしれない。

そういえば、同じく3冠を達成したナリタブライアンが高松宮杯(1996年)に参戦して大きな話題を集めたことがあった。近年はこの手のチャレンジは見られなくなった。超一流馬の大胆な路線変更はもうゲームの中でくらいしか実現しないが…。グランアレグリアのようなマイルからスプリントへのマイナーチェンジは昔も今も結構あるし、成功例もまた数多い。

「あのレースを見て、1200メートルを使いたいと思いました」

高野調教師が〝あのレース〟と振り返るのはリバティハイツの3走前、中京記念(12着)のことだ。3歳春にフィリーズレビューを制したこの馬、一貫して距離1400~1800メートルを使われてきたのだが…。中京記念で外枠から鞍上が仕掛けると道中はかかるくらいの行きっぷりで番手を追走。最終的には前半から出して行った分、止まってしまったのだが、その走りを見て「ピンときた」のだと言う。

中京記念後は放牧を挟んで初のスプリント戦となるオパールSへ出走。重馬場の中で前半3ハロン33秒0を刻む超ハイラップを中団より前で難なく追走、直線でもしっかりと反応して差し切ってみせた。高野調教師は「もっと早く1200メートルを使うべきだったと思わせる内容でしたね」と当時を振り返るほど。そう、5歳秋にしてスプリント適性の高さを証明したのだ。

続く京阪杯こそ、久々だったオパールS快勝の反動があったのか、前半の行きっぷりが悪くて8着に敗れたが、着差は0秒5。見限るのは早計だろう。

「前走にしてもラストはしっかりと脚を使っていたからね。今回は絶好調と言っていいデキ。これが最後の一戦になるかもしれないし、もう一戦あるかもしれない。僕自身はもう一戦あると思っています」

高野調教師が口にする〝もう一戦〟とは高松宮記念(3月28日=中京芝1200メートル)に他ならない。リバティハイツは社台レースホース所属。クラブの規定で牝馬は6歳の3月31日までに引退することになっている。当然、前哨戦で惨敗するようなら繁殖へ向けての準備に入ることになるのだが、高野調教師の頭にはシルクロードS好走のイメージしかない。だからこその〝もう一戦〟なのだ。

もちろん、当方としても高野調教師がシルクロードS快勝後に「もっとどころか、もっともっと早くスプリント路線に参入すべきでしたね」と自虐的に話す姿がすでにイメージできている。

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