「満期になった定期預金、現金で持つ?運用する?」貯金や節約は一通りやっているけど…

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、38歳、会社員の女性。貯金や節約の勉強をし、一通り実践したという相談者。満期になった定期預金を現金で持つべきか、運用するべきかお悩みとのこと。FPの高山一惠氏がお答えします。

現金で1,200万円くらいの貯金、iDeCoとつみたてNISAは月の上限で運用、個別株はやっておらずETF(編集部注:上場投資信託)を少し買っているくらいです。固定費の見直し(携帯代・光熱費)・保険の見直しは済んでいます。ひと通り節約や貯金のためにやるべきことは自分で勉強し、貯金もしつつ、趣味にもお金を使えているので現状不満はありません。ちょうど400万円の5年の定期預金(0.4%)が解約になるのですが、このまま現金で持つべきか(最近金利が良いところもない)、何かすべきか悩んでいます。とくに今後のライフプランが変わる予定はないです。

【相談者プロフィール】

・女性、38歳、会社員、独身

・住居の形態:持ち家(マンション・集合住宅)

・毎月の世帯の手取り金額:38万(確定拠出年金分を引いた残り)

・ボーナスの有無:なし

・毎月の世帯の支出の目安:30万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:8万8,000円

・食費:5万円

・水道光熱費:1万円

・保険料:1万9,000円(1万5,000円は個人年金)

・通信費:2,000円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:10万円

・現在の貯蓄総額:1,200万円

・現在の投資総額:300万円

・現在の負債総額:0


高山:ご相談ありがとうございます。きちんと節約もしつつ、貯蓄も資産運用もやっていらっしゃって立派です! 400万円の定期預金が満期になるとのこと。現金で持つべきか、他の商品を検討するべきか悩んでいるようですね。まずは今後のライフプランを考えた上で、次の預け先をどうしたら良いのか考えてみましょう。

ライフプランを考え、目的別にお金を整理する

まず、今回満期になる400万円の次の預け先を考えるにあたり、今後のライフプランを考えてみることが大切です。そして、ライフプランを踏まえた上で目的別にお金を分けてみましょう。

目的別にお金を分ける時には、まず、お金を「日々出入りするお金」「5年以内に使い道が決まっているお金」「10年以上使わない将来のためのお金」に分け、それぞれ別の口座や金融商品、方法で貯めるという仕組みをつくりましょう。

3つの目的別のお金について

日々出入りするお金とは、もしもの場合に備えるお金や日常生活費です。もしもの場合に備えて、生活費の6カ月〜1年分は確保しておきましょう。できれば1年分を目指せると、急な病気やケガで働けなくなったり、リストラや転職など人生の転機が起こったりしてもあわてなくてすみます。ご相談者さんの1か月の生活費は30万円程度ですので、1年分となると360万円が必要になりますが、既に貯金が1,200万円あるので問題ありません。日々出入りするお金は出し入れしやすい普通預金口座で貯めておくとよいでしょう。

また、家を買うための頭金や留学費用など、5年以内に使い道が決まっているお金があるなら、使うまでに時間はありますが、使う時に元本が割れていると困りますから普通預金よりも少し利回りがよく安全性が高いという視点で金融商品を探します。定期預金や個人向け国債などが選択肢としてあげられます。ご相談者さんの場合、既に住宅も購入されているようですし、現在のところ5年以内に予定しているイベントはないようですね。

老後資金など、10年以上使わない将来のためのお金は、使うまでに時間の余裕があるので、元本が割れる可能性はあるけれど、大きく増える可能性がある投資商品で運用すると良いですね。ご相談者さんは、すでにiDeCoやつみたてNISAを上限金額までやっているとのこと。ここもしっかり準備ができていますね。

とはいえ、ご相談者さんの今後のライフプランを考えると、10年以上使わない将来のためのお金の部分を強化しても良いかもしれません。ですから、定期預金400万円の次の預け先の候補としては、「お金を増やす」という観点で選んでみてはいかがでしょうか。

まとまった資金の活用先案その1、社債

まとまった資金を上手に運用する手段として「債券」は安全性が高く魅力的な商品です。債券の中でも密かに人気があるのが「個人向け社債」です。

個人向け社債は、個人向け国債の会社バージョンだと考えるとわかりやすいでしょう。つまり、会社が個人に向けて発行する債券です。この社債を買うと、定期的に利子がもらえるうえ、満期になったら償還されてお金が返ってきます。

魅力は個人向け国債よりも高い金利が見込めることです。たとえば2020年4月に発行されたSBI債(第40回SBI債・満期2年)の場合、年利は0・60%(税引前)。100万円分買えば、2年後の元本と金利の合計金額は101万1,980円になります。ただし、社債を発行する会社が万が一倒産したら、元本が戻ってこない可能性もあります。ですから、その会社が安定しているか、成長しそうかを確認する必要があります。

個人向け社債には、多くの場合格付け機関による格付けがつけられています。格付けは元本や利子が返ってくるかという信用度を表すものです。格付けが高ければ絶対安全、というわけではありませんが、投資の参考にしてください。

まとまった資金の活用先案その2、外国債券

外国債券に目を向けるという手もあります。金融の規制緩和によって、外国債券も気軽に買うことができるようになっています。外国債券の中でもメジャーなのはアメリカの国債(米国債)です。

米国債はアメリカ合衆国が発行する債券ですが、日本の国債や社債と同様、買うと定期的に利息が得られ、満期になると購入したお金が返ってきます。格付けも非常に高くなっています。それにもかかわらず、1%を超える金利が受け取れることも。新しく売りに出される国債(新発債)だけでなく、すでに売りに出されている国債(既発債)も活発に売買されています。

ただし、米国債に限らずですが、外国債券を購入する場合には、為替変動リスクがあります。米国債の場合、購入時より償還時の円ドルレートが円高ドル安になると、為替で損をします。一方で、償還時に円安ドル高になると、その分利益がでますので受け取り金額が増えます。とはいえ、為替の動向を予想するのはプロでも難しいですから、格付けなども参考に他の外国債券と組み合わせて購入すると良いでしょう。

積極的に増やすには国内外の株式での運用も検討

積極的に増やすという点では、国内外の株式も検討してみても良いでしょう。とはいえ、世界的に新型コロナウィルスの感染が拡大している中、先行き不透明な状況でもありますので、一度にまとまった金額を投資するのは避けた方が良いのではないかと思います。現在、国内の株式も外国の株式も積み立てで購入することができますので、400万円の一部を元手にトライしてみても良いかもしれません。

例えば、野村証券や大和証券などの「るいとう(株式累積投資)」、auカブコム証券の「プレミアム積立(プチ株)」、One Tap BUYの「積み株(米国株)」などがあります。るいとうは月1万円以上1,000円単位を購入していく仕組み、プチ株は月500円以上1円単位を購入していく仕組み、積み株は月1,000円から1,000円単位を購入していく仕組みです。

米国株に投資というと、ハードルが一気に高くなると思いますが、Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoftなどのいわゆる世界を牽引する米国の巨大テクノロジー企業のような超有望銘柄を少額でコツコツ積み立て購入できるので、初心者の方でもトライしやすいでしょう。

ご相談者さんの場合、これまでもお金のことについて勉強されてきているようですので、株についても勉強してみると良いかもしれませんね。今回アドバイスをさせていただいたことを参考にしていただき、ライフプランを見据えた上で、400万円の次の預け先について考えてみてくださいね。

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