審判や場内アナウンス取り止め ポニーが見つめ直す「保護者の負担軽減策」とは

ポニーでは「保護者の負担」について独自の軽減策を示した

家族のカタチが多様化する現代のニーズに合わせた施策を実施

変革の波が押し寄せる少年野球界で、これまでにない大胆な取り組みに踏み切っているのが、日本ポニーベースボール協会だ。5~6歳の「シェットランド」から19~23歳の「サラブレッド」まで、年齢により8つのカテゴリーに分けられているが、幅広い層を対象としているのが特徴だ。

米国に拠点を置く世界的な団体で、アジアパシフィックゾーンだけでも26の国と地域に支部を置く。本部では「Protect Our Nation’s Youth(国の宝である青少年の成長を守る)」を理念に掲げ、子どもたちが成長するための環境作りを行う中、日本では2019年12月に独自のルールを制定する「SUPER PONY ACTION パート1」を発表。少年野球界に一石を投じた。

「SUPER PONY ACTION」が制定された背景には、子どもたちと野球の関係性の変化があるという。

古くは中世ヨーロッパに起源を持つと言われる「ベースボール」は、19世紀初頭に米国で現在のスタイルを確立。日本には、1871年に来日した米国人ホーレス・ウィルソンが東京開成学校予科(現・東京大学)で教えたことをきっかけに、楽しく夢のあるスポーツとして全国に広まった。

1936年に日本初のプロ野球リーグが設立されると、子どもたちはプロ野球選手になることを憧れ、グラウンドで公園で空き地で、それぞれが思うままにハツラツと白球を追いかけた。だが、時の流れとともに状況は変化。いつのまにか、野球は厳しく辛いスポーツの代表格になってしまった。

なぜ、子どもにとって楽しかったはずの野球が、厳しく辛いものになってしまったのか。ポニーでは、現代の野球が勝利を第一に考える管理野球となり、指導者が勝利のため子どもたちに完璧なプレーを求めることから生まれた副作用ではないかと考え、「青少年の成長を守る」という理念に立ち返ったという。

そこで、野球を通じて子どもたちが夢を持ち、自身の無限の可能性を信じてチャレンジする気持ちや、野球に夢中になれる環境を生み出すことこそが、青少年を対象としたスポーツ団体の役割だと確認。子どもたちが長く、楽しく野球を続けられることを願い、「SUPER PONY ACTION」の制定に至った。

2019年に発表された「パート1」に続き、2020年12月には「パート2」を発表。ここではまず、子どもたちの野球離れの主な要因と考えられる「保護者の負担」について独自の軽減策を示した。

「SUPER PONY ACTION パート2」で発表した保護者の負担軽減策とは

少年野球は他のスポーツに比べ、保護者の負担が大きいと言われている。練習や試合がある日は当番制でお茶汲みや選手の怪我対応などをしたり、遠征時に車出しをしたり、試合の審判やアナウンスを務めたり。子どもが野球に興味を持っても、保護者にかかる負担の大きさに躊躇して他のスポーツを選んだり、途中で辞めてしまう家庭も少なくない。

そこでポニーでは従来、保護者がボランティアとして担うことが多かった審判員制度を見直した。

2021年度の中学1年生大会から、地方大会の準々決勝以下および全国大会の2回戦以下の試合については審判2人制を採用。従来は3人以上だった審判の人数を減らすことで、父兄審判員の要請機会を減らす狙いがある。中学生にとっての野球が競技かスポーツか考えた時、特に1年生はスポーツの側面が強いことから、まずは1年生大会で運用し、上級生大会での導入の是非について協議していくという。

審判2人制となっても父兄審判員が必要となる場合もあるが、父兄審判員を出せないチームもあるだろう。その場合は、費用を支払って代行要請ができる新システムの利用が可能で、費用は1試合につき2000円ほどを検討。金銭的に負担にならない形を目指す。

また、練習試合などでは選手が審判を務められるように、選手を対象とした審判講習会も開催する。選手自身がルールを理解し、審判員を務めることで、新たな気付きやルール遵守を促す目的があるという。第1回の選手向け審判講習会は、5月のポニーフェスタで開催される予定だ。

その他、地方大会の準々決勝以下および全国大会の2回戦以下の試合では、場内アナウンスを廃止することも決定。アナウンスも主に保護者が担当していた。

共働きやシングルファーザー、シングルマザーなど家族のカタチが多様化する中、まずは保護者の負担を軽減することで、子どもたちが野球を始めるためのハードルは低くなるだろう。現代のニーズを察知しながら、協会が柔軟に対応していく姿勢は、子どもたちが野球を楽しむ環境作りのカギを握ることになりそうだ。

(次回は2月12日を予定)(Full-Count編集部)

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