他球団も大注目 〝理論派〟巨人・桑田コーチが「投げ込み指令」発動のワケ

「桑田理論」実証なるか

「桑田理論」に日本球界が大注目だ。15年ぶりに古巣復帰した巨人・桑田真澄投手チーフコーチ補佐(52)の本格指導が春季キャンプからスタートする。これまでアマチュア野球に対しては球数制限など多くの提言を行ってきたが、今回は一転して〝投げ込み指令〟を発動。球界内に大きな反響を呼んでおり、ライバル球団も今後の行方に熱視線を送っている。

桑田コーチがどんな指導を行うのか。その一端が明かされたのが、24日に放送されたNHK「サンデースポーツ」だった。

これまで桑田コーチは最先端のスポーツ科学などを自ら研究し、高校野球における球数制限の導入をはじめ、数々の持論を唱えてきた。それだけにプロの舞台でどんな指導方法を取るのかは大きな注目点だった。

桑田コーチは「サンデー――」で「僕自身は投げないとスタミナはつかないと思いますね。ブルペンに入る回数、投げる球数は当然、増えていきますよ」と予告。自身も世間が抱く〝アンチ投げ込み派〟とのギャップを感じていたようで「これはすごい誤解があって、練習をやり過ぎちゃいけないというのは学童野球、学生野球の年齢なんです。成長期に無理なトレーニングをすると故障につながるので、僕は制限するべきだと話をしているんであって。プロ野球選手は練習しなきゃダメです」とプロ・アマの間に明確な一線を引いた。

この発言を巡り、ライバル球団からは驚きとともに大きな反響が巻き起こった。他球団のあるコーチ経験者は「桑田さんが言ったという事実に意味がある。指導者はかなり注目していると思いますよ」と言う。

なぜなのか? 背景には昨今のコーチたちが抱える「大きな悩み」があるそうだ。「今は、自分たちが現役だったころのように選手に投げ込みを強いて、万一壊れたら重大な責任問題になる。だから、こちらから『たくさん投げ込め!』とは強気に言えないし、選手任せになっている部分があるんですよ」(同)

投げ込みの必要性を感じていながら、指導する側が故障を恐れて尻込みしてしまう――。こうしたジレンマに一石を投じるためにも、桑田コーチの考え方に注目しているわけだ。

同様の悩みを抱えていたという別のコーチ経験者も「桑田さんは過去の経験則だけで物事は話さない。引退後には大学院へ進んだり、最新のスポーツ科学に関する研究を重ねてきた理論派。桑田さんが言うなら説得力があるし、その結果次第では自信をもって『投げ込み指令』を選手に出せる日が来るかもしれない」と興味津々だ。

もちろん桑田コーチもやみくもに投げ込みをさせるわけではない。故障のリスクと隣り合わせとなる球数増とどうバランスを保ち、投手陣を底上げしていくのか。今後、「桑田理論」の正当性が実証されれば、そのノウハウは他球団にも浸透していきそうだ。

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